テレビ朝日、「北朝鮮がミサイルを発射した際にイージス艦が日本海に展開していないのはおかしい」と主張して墓穴を掘る

 10月2日に北朝鮮が潜水艦発射型の弾道ミサイルを射ったことに対し、テレビ朝日が「ミサイル迎撃を行うイージス艦が日本海に配備されていなかったのは問題」と批判しています。

画像:イージス艦が日本海に展開していなかったことを批判するテレ朝・報道ステーション

 この主張は論外と言わざるを得ないでしょう。なぜなら、テレビ朝日は「イージス艦の増設・配備に必要な防衛費の拡充」や「陸上版イージス艦であるイージス・アショアの配備」に反対してきたからです。

 自社が主張してきた内容と矛盾しており、墓穴を掘ったと言わざるを得ないでしょう。

 

 北朝鮮が2日、潜水艦発射型弾道ミサイルとみられる飛翔(ひしょう)体を発射した際、ミサイルを迎撃するためのイージス艦が日本海に1隻もいなかったことが新たに分かりました。

 日本政府はこれまで北朝鮮の弾道ミサイルを迎撃するための海上自衛隊のイージス艦を日本海に1隻から2隻、常に配備していました。しかし、政府関係者によりますと、去年の米朝首脳会談後、弾道ミサイルの発射が減ったことや短距離弾道ミサイルの発射にとどまっていたことなどを受けて今回、イージス艦の配備を見送っていたといいます。

 

兆候を把握できれば早期展開は可能だが、間に合う保証はない

 これまで日本の防衛は(北朝鮮などからの)弾道ミサイル発射の兆候を早期に把握し、日本海にイージス艦を展開させるという方式を採用して来ました。しかし、これには限界があることが防衛省から言及(PDF)されています。

画像:防衛省の説明資料1

 なぜなら、日本海でイージス艦の洋上展開が完了する前にミサイルが発射されてしまうと、ミサイル防衛の機能が全く活かされないという事態になってしまうからです。

 弾道ミサイルの発射方式が固定式だった時代は「発射の兆候を掴むことが容易」でした。これは発射場を偵察衛星などで監視していれば、普段とは異なる作業痕跡から『発射の準備』を疑うことができたからです。

 しかし、「移動式の発射台」や「潜水艦からの発射」となると、『発射準備の痕跡』を見つけることが極めて困難になります。そのため、24時間・365日体制でミサイル防衛ができるイージス・アショアの配備が重要と主張されるようになったのです。

 

イージス艦はイージス・アショアの役割を担えるが、「コストが割高すぎる」という大きな問題が存在する

 報道ステーションを始めとするテレ朝の主張で失笑物なのは「費用対効果の視点が欠落し、過去の主張内容と矛盾が生じていること」です。

画像:防衛省の説明資料2
  • イージス・アショア
    • 費用: 約1200億円(1基あたり)
    • 必要配備数: 2基
    • 弾道ミサイル防衛(= BMD)任務のみ
  • イージス艦
    • 費用: 約2000億円(1艦あたり)
    • 必要配備数: 最低8艦(※ ローテーション必須のため)
    • BMD任務以外(対航空機・対水上艦・対潜水艦)も可能だが、乗務する隊員の勤務環境が極めて過酷

 テレビ朝日は「イージス・アショアの配備反対」に肩入れしていますので、『ミサイル防衛』の観点から採れる選択肢は「イージス艦および乗組員の配備拡大」だけです。そのためには防衛費の拡大が不可避なのですが、防衛費の増加にも苦言を呈しているのです。

 これほどの欺瞞はないと言わざるを得ないでしょう。

 

「早期検知」には日本海での洋上展開は重要だが、「迎撃」なら太平洋からでも可能

 迎撃をするなら、太平洋からでも可能です。イージス艦を日本海に洋上展開させる目的は「早期検知」であり、その役割はイージス・アショアの方が費用対効果は高いのです。

 したがって、「日本海にイージス艦が展開していなかったこと」をテレビ朝日などが批判するほど「イージス・アショアを早期に導入することが現実的な最適解」と返されることになります。

 この部分を認めようとせず、「イージス・アショアの導入反対」や「防衛費の増加反対」を叫ぶのは間違いです。日本が射程距離に入る弾道ミサイルを平気で発射する国があるから防衛費を(止むを得ず)投じなければならない状況に置かれているのです。

 「軍事費の拡大が続く韓国」や「弾道ミサイルを発射し続ける北朝鮮」の姿勢を “目溢し” する時点で平和を訴える資格はないと言えるでしょう。

 

 「テレビ朝日のような “お花畑” の主張に理解を示し、対策を講じることを怠っていると有事の際に取り返しのつかない事態に見舞われる」という認識を持つ必要があると言えるのではないでしょうか。