「沖縄は対策しても新型コロナの死者は1000人」の試算結果を OIST の外国人研究者が示すも、根拠は『武漢での感染力』と『欧州での死亡率』

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)のピゴロッティ准教授らの研究チームが「対策を施しても沖縄県内で新型コロナウイルスによる死者が1000人を超える」とする試算を公表したと沖縄タイムスが報じています。

 この試算は全く持って価値のないものです。なぜなら、実態とかけ離れたいるからです。『武漢で記録された感染力』は “沖縄の実態” と合致していないにも関わらず、それを根拠に予測されたシナリオなどフィクションと同じと言わざるを得ないでしょう。

 

 OIST(沖縄科学技術大学院大学)のシモーネ・ピゴロッティ准教授らの研究チームが、4月中旬までの県内の症例数などのデータを基に、新型コロナウイルスの感染拡大と影響を予測する数学モデルを構築し、OISTのホームページで発表した。完成したモデルは、県内で感染防止対策を講じなかった場合は約2万人、講じた場合でも約千人の死者が出ることを示した。

 

「緩い封じ込め策では R<1 にならないから、(R<1を満たす)ロックダウンをしろ」がピゴロッティの主張

 まず、研究チームの代表者であるシモーネ・ピゴロッティ准教授は『ロックダウン要求派』です。イタリア系の名前を持っていることから、“母国の惨状” が主張に少なからず影響を与えているものと考えられます。

 研究チームが発表した内容は OIST の公式ホームページに掲載されており、実効再生産数は以下のように言及されています。

 封じ込め対策なしのベースラインシナリオを使用した場合、感染者1人から広がる感染者数を示す数学用語の基本再生産数(Ro)を2.5と推定しました。

 (中略)

 次に研究チームは、2つの異なる封じ込めシナリオについての予測調査を行いました。1つ目は、厳密な封じ込め対策を講じることで、Roが65%減少して1よりわずかに下回る数値となるシナリオで、つまり感染者1人が平均して1人未満に感染を引き起こす場合です。2つ目はゆるい封じ込め対策を講じ、Roが40%減少して約1.5になるというシナリオです。

 そもそも論として、R0=2.5 を採用している時点で「日本では価値のない論文」と一蹴せざるを得ないものです。このような “作文” をすることは自由ですが、研究成果として評価されてはならない類のものと言えるでしょう。

 

ピゴロッティ准教授が「R0=2.5」とした根拠は中国・武漢の数値

 「R0=2.5」という数字は「中国・武漢で推計された数値を基に研究チームが定義した」と論文(PDF)の中で言及されています。

画像:武漢での数値を使用したことを認める論文箇所

 確かに、中国・武漢と同じ R0 が沖縄でも記録されれば、新型コロナウイルスによる感染者・重症者・死者は同じ割合で発生するでしょう。

 ただ、この情報には何の価値もありません。「東京と同じ宝くじの当選確率ならば沖縄での当選者はこうなる」との主張を論文形式で発表しているに過ぎないからです。しかも、R0=2.5 と見積もられた数値は日本では通用しないことは専門家委員会が発表した資料からも明らかです。

画像:日本全体での実効再生産数Rの推移

 しかも、ピゴロッティ准教授らは「ロックダウンをすればRは1をわずかに下回り、緩い封じ込め策では R=1.5」と主張しているのです。しかし、実態とは明らかにかけ離れているのですから、論文を撤回することが責務と言わざるを得ないでしょう。

 

5月8日時点で沖縄県では死者5名・重症者5名の現実

 沖縄県が発表した5月8日12時時点での新型コロナウイルスの感染者数(PDF)は次のとおりです。

  • 入院中: 52名
    • 重症: 5名
  • 療養中: 3名
    • 宿泊施設: 2名
    • 自宅: 1名
  • 入院勧告解除(≒ 退院): 82名
  • 死者: 5名

 累計感染者数は142名。ピゴロッティ教授らの論文を作るためのデータを収集した4月中旬での感染者数が100名超でしたから、その時点から新規感染者がぱったり止まっているのです。

 論文の内容そのものが「残念極まりないもの」ですが、それを大きく取り上げた沖縄タイムス(や琉球新報)の姿勢も同様と言わざるを得ないでしょう。

 

 日本は「なぜか新型コロナウイルスによる重症化率と死亡率がヨーロッパよりも低い」という実測データが出ていますし、それを反映した試算でなければ研究的な価値はありません。

 他国で記録された数値を日本や特定地域の人口比に当てはめるのは素人のすることであり、研究者として実力不足との批判は免れないと言えるのではないでしょうか。