サッカー北朝鮮女子代表を入国させる義務はない

 日本政府は2月29日から大阪で開催されるリオ五輪出場を賭けたサッカー女子アジア最終予選に北朝鮮代表の入国を受け入れる方針を固めたと時事通信が報じています。

画像:リオ五輪2016

 

 政府は、29日から大阪で行われるサッカー女子のリオデジャネイロ五輪アジア最終予選に出場予定の北朝鮮代表の入国を受け入れる方針を固めた。政府高官が14日、東京都内で記者団に明らかにした。日本は北朝鮮に対する独自制裁として、北朝鮮籍者の入国を原則禁止しているが、例外措置として入国を認める。

 このニュースに対し、「スポーツと政治は切り離して考えるべきだ」と主張する人も多数いるでしょう。しかし、この意見は建前的なものであることを理解する必要があります。

 例えば、UEFA (欧州サッカー連盟)はウクライナ騒乱の影響から、ロシアサッカー連盟に所属するクラブとウクライナサッカー連盟に所属するクラブの対戦は組まないよう “配慮” しています。

 政治とスポーツが切り離されているなら、こういった措置は取られないでしょう。ですが、実際には “配慮” という形で(サッカー連盟が)介入し、余計な火種を作ることを事前に防いでいることが実状なのです。

 今回の日本政府の判断については正しいものと言えるでしょう。

 

 理由は『スポーツと政治を分けているから』というものではありません。独自制裁が決定する前から予定されていた国際大会を滞りなく開催することを優先したためです。

 北朝鮮がミサイルを発射する前から、大阪でサッカー女子アジア最終予選が開催されることは決定していました。そのため、後から政府が入国拒否することは政治介入との批判を招く恐れがあります。したがって、今回のように入国を認めたことは妥当な判断と言えるでしょう。

 ですが、今後については特例で対応する必要は皆無です。

 なぜなら、“北朝鮮籍者の入国を禁止” を国として決定しているからです。「スポーツ選手もしくはその関係者である」と申告すれば入国が認められるのであれば、制裁の意味がありません。粛々と規則に沿った形で処分を下す必要があります。

 

 ルールをねじ曲げて問題が生じた際に FIFA や AFC (アジアサッカー連盟)はその責任を取り、問題解決に向けて奔走するでしょうか。

 現実には「政治とスポーツは別」と都合良く主張し、逃げを打つのは目に見えています。スポーツは確かに国際交流という点では有効な手段でしょう。しかし、唯一無二の方法ではないことを理解しておかなければなりません。

 関係が緊張した国同士を無理に対戦させることは当事者にとっては負担が増すだけです。(当事国同士の対戦を組まないといった)冷却期間を設けることの重要度を認識する必要があると言えるのではないでしょうか。