巨人で発覚した “祝儀” の慣習、 再発防止策を提示する

 NHK によりますと、巨人は公式戦で試合前に円陣で声を出しを担当した選手が他の選手から試合に勝った祝儀として現金を受け取っていた慣習があったことを公表したとのことです。

 野球賭博調査委員会は「賭けには当たらない」との立場を採っていますが、賭博問題で揺れている最中ではタイミングが悪すぎると言わざるを得ないでしょう。

 

 巨人によりますと、この慣習は、4年前の平成24年5月から始まり試合に勝った際、試合前に投手陣と野手陣がそれぞれで組む円陣で声出しを担当した選手にほかの選手が祝儀として5000円を出していたということです。受け取る金額は最も多い場合で8万円ほどだったということです。また、試合に負けた際は、声出しを担当した選手がほかの選手に1000円ずつ払っていたということです。

 

 巨人軍で行われていた上記の行為が問題視される理由は「選手間で現金の受け渡しがあり、賭博行為と誤解を招く可能性があるから」でしょう。

 仮に支払い先が日本赤十字やユニセフなどのチャリティー目的だった場合、世間の受け止め方は違ったと思われます。ただ、対戦相手が “ご祝儀” の意味を込めて意図的に手を抜く可能性があり、シロだと言い切ることができないことも事実です。

 “祝儀” の慣習ですが、これに対する再発防止策は甲斐谷忍さんの野球漫画『ONE OUTS』で登場したLチケット(MVPチケット)を基準にすることが有効となるでしょう。ちなみに、以下のようなシステムです。

 

画像:Lチケットの説明(漫画:ONE OUTS より)

 Lチケットシステムをそのまま利用することはできません。なぜなら、「Lチケットシステムにより、従来の年俸契約は廃止される」という文言が野球協約(2015年版:PDFファイル)に抵触するからです。

第88条 (歩合払いと請負払い)
 球団は選手に対し参稼報酬の支払いに代えて、試合収入金の歩合、又は請負による支払いあるいはこれに類する支払いを約定してはならない。

 参稼報酬と年俸のことを意味するため、「基本給ゼロ+インセンティブ契約のみ」は野球協約で禁止されています。ですが、前田健太投手がドジャースと契約したように「基本給を低く抑え、インセンティブを高く設定すること」は可能なのです。

 つまり、その価値観に則った年棒体系を提示すれば済む問題なのです。

 

  1. 年俸
    • 選手の知名度や人気度で算出
    • 宣伝広告費という扱い
    • オールスター級、一軍主力級、一軍級、ファーム枠、若手枠、ルーキー枠などに分類し、年棒額を決定
  2. インセンティブ
    • 出場成績による出来高を算出
    • 試合中のチームへの貢献度で金額が上下

 ファンが購入するチームグッズの売上貢献などは年棒面に含まれる形を採り、グランド上での成績はすべてインセンティブという形で反映させるべきでしょう。

 そうすることで、「アスリートとして勝敗や自分のプレーでベストを尽くせるように集中すること」につながりますし、賭けとは異なり、勝つために選手・チームとしてどん欲になることが見込めるからです。

 

 巨人軍についてはインセンティブをLチケットをモデルにした “Gチケット” を販売し、ファンからの MVP 投票によって報酬額を決める制度と、“ワンナウツ契約” をミックスした形にすることが理想的です。

 ファン投票のみですと、組織票で左右されるリスクがあり、野球選手としての実力に対する評価が疎かになる可能性があります。それを防ぐために、選手の成績だけで査定する “ワンナウツ契約” との両方からインセンティブを受け取れる年俸体系を構築しておく必要があると言えるでしょう。

 “ワンナウツ契約” とは投手がアウト1つを取るたびに報酬が支払われ、失点をするたびにマイナス報酬になるというものです。この契約は報酬額と期間を上手く調節すれば、非常に真っ当な契約形態になると思われます。

 バッターについても同様のことが言え、チームが目指すスタイルによって調整することが可能です。打率重視ならヒットにインセンティブを置き、出塁率重視ならヒットと四球(死球を含む)のインセンティブを同じにすれば良いためです。

 

 今季の成績に関係なく、高額な年俸が保証されているのは(テニスやゴルフを除く)スポーツ選手に限定されています。その安心感から “賭け” による刺激を求めているのではないでしょうか。

 でしたら、一般の社会人や経営者と同じく、高額な支払いの対価は自身が今季残したパフォーマンスと比例するように報酬体系を変える必要があります。それをしない限り、同じような出来事がプロ野球界で再発すると思われます。