球団の施術ミスで選手がシーズンを棒に振った巨人は医療体制そのものを見直す必要がある

 巨人軍で前代未聞の出来事が発生しました。NHK によりますと、右肩を痛めて今シーズンは1軍で登板できていない巨人・澤村投手が球団トレーナーによる「はり治療の施術ミス」によって、腕の神経に麻痺が出ていたことが原因とのことです。

 これはチームにとって大問題です。プロスポーツ選手のフィジカルは重要な資産であり、施術ミスという理由で資産の価値を大きく損なうような失態を繰り返してはならないと言えるでしょう。

 

 球団によりますと、澤村投手は沖縄でキャンプ中の2月25日に右肩に張りを感じ、27日に球団のトレーナーによるはり治療を受けました。しかし、その後も状態がよくならないことから、複数の医師による診察を受けたところ、「長胸神経」という腕の神経のまひと診断されたということです。

 まひははり治療によって起きた可能性が高く、さらに一時的にまひが出た結果、「前鋸筋」という胸部の筋肉の機能障害を起こした可能性が考えられるということです。

 この結果を受けて、9日、鹿取義隆ゼネラルマネージャーと石井一夫球団社長が川崎市のジャイアンツ球場で澤村投手に直接、謝罪し、澤村投手もこれを受け入れたということです。

 

 

1:球団トレーナーが「はり治療」をしたのは適切なのか?

 右肩の不調を訴えた澤村投手に対し、球団トレーナーが「鍼治療を行ったことは適切だったのか」という点を巨人軍は徹底的に調査しなければなりません。

 トレーナーが(はり師の)資格を持っていたなら、鍼治療をすることは問題ありません。しかし、現実には施術ミスが起きた訳ですから、医療ミスを同じ扱いで施術を行った球団トレーナーに対処する必要があります。

 もし、無資格で鍼治療を行っていれば、球団側の落ち度が極めて高くなると言えるでしょう。この点ははっきりさせておく必要があるのです。

 

2:「澤村投手の状態がおかしい」と感じた後の巨人軍の対応は評価できる

 巨人軍の対応ですが、「澤村投手の状態が回復して来ないのはおかしい」と感じた後の動きは評価されるべきものでしょう。複数医師の診断を受け、原因まできちんと突き止めているからです。

 ただ、「なぜ最初から複数医師の診察を仰ぐことができる体制を構築していなかったのか」という批判を避けることはできません。

 “信用” が重要な要素を占める医療では、情報漏洩は病院の信頼をすぐに落とすことになります。そのため、球団と病院側で「選手の診察結果は機密情報」との機密保持契約を締結し、外部に漏れなくした上で選手が診察しやすい状況を作っておくべきでしょう。

 

 それでも、週刊誌などが「病院に行った」などと騒ぐことを心配する選手はいると思われます。

 これはサッカー界で行われていることを参考にすれば、問題は解決可能です。心臓疾患を持った選手がピッチ上で亡くなるケースが起きたことから、サッカーではシーズン前にメディカルチェックを受けることが恒例です。

 これを野球界でも導入すれば、「選手が病院に行った、どこかを負傷しているのでは」と週刊誌が報じても、「恒例のメディカルチェック」と誤魔化すことが可能になるからです。医療体制などは他のスポーツ界の良いところを導入できる余地は大きく残されていると言えるでしょう。

 

3:「現在の年俸額を下限」とした年俸をオファーすることが巨人軍の責務

 巨人は澤村投手に謝罪したとのことですが、球団としてもケジメをつける必要があります。球団トレーナーへの処分はもちろんのこと、澤村投手との来季契約において誠意を見せる必要があるからです。

 少なくとも、現状維持の金額を提示しなければなりません。登板機会がなかったのですから、ダウン提示が一般的です。しかし、球団側の施術ミスで登板できなかったのですから、「ダウン提示をした」と伝えられた時点で大バッシングを受けることになります。

 したがって、今年の年俸額と同額を提示した上で「2018年シーズンに完全復調できなくとも、2019年も(球団に所属していれば、)同額の年俸を出す」とのオプションを盛り込んだ内容にすべきでしょう。

 プロ野球選手会も、巨人・山口俊投手の件で巨人軍に喧嘩を売る暇があるなら、「澤村投手に対する契約提示の内容を見守る」との声明を出すべきです。その方が、世間も選手会の活動に賛同してくれると考えられるからです。

 

 巨人軍が澤村投手をどのようにサポートし、それを世間にアナウンスし続けるのかに注目する必要があると言えるのではないでしょうか。