賭博に甘い対応をする巨人とは違い、阪神がオ・スンファン(呉昇桓)の獲得に乗り出すことはないだろう
巨人の機関紙である報知新聞が「阪神、来季も韓流補強」と題し、阪神で守護神として活躍したオ・スンファン投手を補強リストに加える可能性があると書いています。
ただ、このシナリオはまずないと言えるでしょう。“投手の能力とは別の理由” で球団側が獲得に難色を示すと考えられるからです。
14、15年に阪神で2年連続最多セーブの呉昇桓(オ・スンファン)投手(35)の代理人とも強固なパイプを築いている。今オフはカージナルスからFAとなり、所属先が決まっていない。ドリス、マテオ、モレノとリリーフ助っ人がそろっており、早急に獲得する予定はないが、チーム事情が変われば、再び補強リストに加える可能性もある。
「選手層次第で獲得もあり得る」という書き方を報知新聞はしています。しかし、これは巨人軍の論理であり、阪神タイガースが示した価値観とは異なるものだからです。
1:阪神がオ・スンファンとの残留交渉を打ち切った理由
雑誌『Number』で鈴木忠平氏が阪神がオ・スンファン投手との残留交渉を打ち切った理由を紹介しています。
- 2015年12月頭の時点でオ・スンファンと阪神はほぼ合意に達していた
- 同年12月7日:オ・スンファンに不法賭博容疑があるとメディアが報じる
- 12月11日:阪神が交渉打ち切りを決める
- 12月30日:オ・スンファンが単純賭博罪で略式起訴
阪神は野球協約第180条にある「賭博行為の禁止及び暴力団員等との交際禁止」を “疑惑” の段階で遵守したと言えるでしょう。
鈴木忠平氏が記事で紹介しているように、阪神は賭博など問題行為には厳しい姿勢を採る球団なのです。したがって、報知新聞が描くシナリオが現実のものとなる可能性はかなり低いと言わざるを得ません。
2:グレーの段階で決別した阪神がクロと判明した選手の獲得に乗り出すのか?
阪神タイガースはオ・スンファン投手の嫌疑が「グレーの段階」で決別を選択しました。そのため、再び獲得に乗り出す可能性は低いと思われます。
「クロ」となった選手でも、罪を償ったのであれば再チャンスは与えられるべきでしょう。しかし、再チャンスは与えられるべきですが、与えなければならないものではありません。これは “正直者” がバカを見ることがないようにするための措置です。
問題行為に手を染めても、絶対に再チャンスの機会が与えられることが保証されているのであれば、更生しようとしない者が出てくるリスクがあるからです。
オ・スンファン投手の場合は「プロ野球で再度プレーする機会は与えられるべき」ですが、「阪神が再びプレー機会を与えなければならないということではない」のです。
野球協約第180条を理由に阪神はオ・スンファン投手との残留交渉を2015年12月に打ち切っているのです。したがって、賭博や暴力団員との関わりに対する阪神の “チーム事情” が変わらないかぎり、オ・スンファン投手の獲得に阪神が乗り出す可能性はないと言えるでしょう。
「球界の顔」として振る舞う伝統球団である巨人軍が野球協約に忠実ではなく、賭博や暴力団員との関わりで揺れたこととは対称的です。「巨人軍は紳士たれ」というスローガンが “掛け声倒れ” になっている現状を報知新聞は重く見る必要があると言えるのではないでしょうか。