『左打者に有利な球場』を本拠地にするレンジャーズが “左打者にカモにされた” オ・スンファンを獲得する理由
MLB でバッテリーキャップが始まるまで1週間と迫りましたが、テキサス・レンジャーズが FA となっていたオ・スンファン投手を獲得したと Full-Count が報じています。
ただ、この補強戦略には疑問が残るところです。なぜなら、獲得に乗り出す理由が戦力的には見当たらないからです。
1:左打者にとって “カモ” だったオ・スンファン
カージナルスで2年間を過ごしたオ・スンファン投手ですが、2年目の2017年シーズンは成績を大きく下げました。
- 2016年の成績
- 防御率:1.92
- 成績:6勝3敗19S(79回2/3)
- K/BB:5.72
- WHIP:0.92
- 対右打者:被打率 .201、被長打率 .308、OPS .555
- 対左打者:被打率 .176、被長打率 .221、OPS .455
- 2017年の成績
- 防御率:4.10
- 成績:1勝6敗20S(59回1/3)
- K/BB:3.60
- WHIP:1.40
- 対右打者:被打率 .250、被長打率 .364、OPS .642
- 対左打者:被打率 .333、被長打率 .606、OPS 1.006
投球傾向などの分析が進んだのでしょう。相手打者を抑えられなくなったことがデータでも示されています。特に、対左打者の成績を大きく落としているのです。
この状況でレンジャーズがオ・スンファン投手の獲得に乗り出すことは大きなリスクが伴うことでしょう。
2:『投手有利の球場』から『打者有利の球場』に本拠地を移すリスク
オ・スンファン投手が昨シーズン本拠地としていたブッシュ・スタジアムは『投手有利の球場』です。それが今シーズンからは『打者有利の球場』であるグローブライフ・パークに本拠地を移すのです。
これは「リスクが高い」と言えるでしょう。ちなみに、両球場のパークファクター(1が平均値)は以下のとおりです。
- グローブライフ・パーク・イン・アーリントン
- レンジャーズの本拠地
- メジャー全体で2位(得点:1.215)
- HR: 1.127、H: 1.135、2B: 1.185、3B: 1.000
- ブッシュ・スタジアム
- カージナルスの本拠地
- メジャー全体で25位(得点:0.889)
- HR: 0.849、H: 0.974、2B: 0.957、3B: 0.967
“投手有利のブッシュ・スタジアム” でオ・スンファン投手が2017年に記録した成績は1勝4敗10S。29回2/3 のイニングを投げ、防御率は 4.55、被打率は .323 でした。
レンジャーズの本拠地であるグローブライフ・パークはメジャー屈指のヒッターズ・パーク(=打者有利の球場)であり、中でも左打者が有利になる球場です。ここを本拠地とする球団が “左打者を苦手にしている投手” を獲得する戦力的な理由はないと言えるでしょう。
3:レンジャーズがオ・スンファンを獲得する本当の理由は “韓国マネー” だろう
『フライボール革命』が進行するメジャーリーグで “データ的に相性が悪いことが明らかな投手” を獲得する戦力的な理由はありません。
しかし、レンジャーズはそれでも獲得したのです。これは「レンジャーズが戦力面とは別にオ・スンファンを獲得する意味がある」と見なしたのでしょう。
その理由は “韓国マネー” です。レンジャーズには韓国人のチュ・シンス選手が在籍しています。そのため、オ・スンファン投手を獲得すると韓国での露出度が上がり、韓国系企業からのスポンサー収入がアップすることを見込めるのです。
ドジャースが『韓国人にとっての国民的球団』だったのですが、(前田健太投手やダルビッシュ投手の活躍とリュ・ヒョンジン投手の不振で)その立場が揺らいでいます。レンジャーズがドジャースに広告を出している韓国系企業を引き抜けるなら、オ・スンファン投手に数百万ドルの年俸を払う価値はあると見なすでしょう。
そのような経営的な判断が働いたものと考えられます。
とは言え、獲得した選手が活躍しなければ、フロント陣が失態を責められることになるのです。レンジャーズは過去に「パク・チャンホ投手の獲得」で大失態をやらかしています。歴史は繰り返されるのかに注目と言えるのではないでしょうか。