阪神の低迷理由は「チームの方向性を示さないフロント陣」と「組織管理能力に欠けた監督」

 阪神タイガースでオフの定番となっている “お家騒動” が発生し、金本知憲監督が(実質的な)解任となりました。

 組織として機能していないのですから、チームが低迷することは当然の結果と言えるでしょう。フロントと監督の双方に大きな責任があり、これらの問題を解決できなければ、阪神は低迷期に逆戻りすることになってしまうことでしょう。

 

「チームの方向性」を定められない球団フロントの責任は重い

 まず、阪神で定番の “お家騒動” が勃発する理由は「チームの方向性が定まっていないこと」が理由です。

 チームが目指すべき方向性やスタイルが固まっていないのですから、結果が出なければゴタゴタが起きる原因になります。近鉄の『いてまえ打線』に代表される打撃偏重型のチームにするのか、『スモールベースボール』を重視したチームにするのかはフロントが決めなければなりません

 阪神タイガースのフロント陣はそのような方向性を明示していないのですから、監督が交代するごとにリセットされてしまうのです。

 金本監督には「阪神を変えてくれ」と依頼しましたが、「どのようなスタイルのチームに変えるのか」までは注文していません。この部分を明らかにしておくことで『解任基準』ができる訳ですから、評価の基準を示しておくことはマネジメントという点で重要だと言えるでしょう。

 

若手育成に失敗し、成績も伴わなかった監督が辞任に追い込まれるのは当然のこと

 次に、金本監督の辞任は当然でしょう。なぜなら、続投するに値する実績として不可欠な「選手の育成」や「チームの成績」という2点がどちらも散々なものだったからです。

表:阪神タイガース若手有望株選手の打撃成績
2016 2017 2018
髙山 俊
(25, 15年D1位)
打率:.275
本塁打:8
打点:65
打率:.250
本塁打:6
打点:24
打率:.172
本塁打:1
打点:14
中谷 将大
(25, 10年D3位)
打率:.266
本塁打:4
打点:14
打率:.241
本塁打:20
打点:61
打率:.230
本塁打:5
打点:26
糸原 健斗
(25, 16年D5位)
打率:.259
本塁打:1
打点:24
打率:.286
本塁打:1
打点:35

 中でも高山選手を育て切れなかったことは大きなマイナスです。金本監督がドラフトで獲得を希望し、2016年には新人王を獲得。潤風満帆と言えるプロ生活をスタートさせました。

 しかし、2年目・3年目と年数を重ねるごとに打撃成績は低下。右投左打という金本監督と同じタイプで、糸井選手や福留選手という手本がいることに加え、片岡打撃コーチ(右投左打)がいる中での打撃不振は首脳陣を解任する十分な理由となるでしょう。

 「新人王を取った選手を一流に育てられないなら、誰を一流選手に育てられるの?」となるからです。

 

期待感が持てる若手有望株が阪神にいない訳ではない

 阪神タイガースも『球界を代表する選手』になれる可能性を感じさせる若手選手を複数擁しています。2016年の新人王である高山選手や2017年に本塁打20本を放った中谷選手が代表例でしょう。

 ただ、有望株選手のほとんどがプロ入り前から持っていたポテンシャルに依存した状態になっており、その貯金を使い果たすと伸び悩む結果を招いているのです。これは選手だけの問題と言うより、監督・コーチの責任も大きいと言わざるを得ません。

 ポテンシャルを引き出すことに加え、プロの技術を吸収して自分のものにすることがプロ野球選手として長く活躍するには不可欠です。監督やコーチがそのための “触媒” として機能していないのですから、阪神で有望株選手が伸びづらくなっているのでしょう。

 

「広い甲子園」を本拠地とし、「打線が脆弱」という現実を踏まえることが必須

 球団が「勝つチーム」に重点を置いたチーム作りをするのであれば、『広い甲子園』という現実に目を向けた対策が不可欠となります。なぜなら、金本監督が就任してからの3年間で、打線はリーグ平均以下だからです。

 2017年は打てていた印象があるかもしれませんが、この年はヤクルトがチームとして絶不調。リーグ平均を大きく引き下げていたのです。スワローズが1年で復調したこともあり、2018年は再びリーグ平均を下回るチーム打撃の成績になっています。

 ただ、阪神の安打数は1221本と他チームと変わりません。(2018年のチーム最多安打はヤクルトの1287本、最小は DeNA の1209本)

 ですが、ホームラン数が圧倒的に少ないため、得点数が伸びないのです。『広い甲子園』を本拠地にしていれば当然の結果ですが、本拠地負け越している現状は改善する必要があると言えるでしょう。

 

 甲子園の外野に “ラッキーゾーン” を復活させる気が球団にないなら、1985年の「バックスクリーン3連発」の記憶を忘れるべきです。浜風の影響でライト方向へのホームランが出にくい球場なのですから、打撃型のチームを作ろうとすることが間違いなのです。

 ホームランやホームラン・キャッチという見せ場の減少は観客動員数に響く訳ですから、球団のフロント陣も低迷からの脱却策を講じる必要があると言えるのではないでしょうか。