高額な買取価格が保障された補助金依存の太陽光発電で、未稼働施設の買取価格が引き下げられることは朗報

 読売新聞によりますと、経産省が FIT (全量固定価格買い取り制度)で高価格での買取を認定されながらも、未稼働の太陽光発電事業者に対する買取価格を引き下げる方向に進んでいるとのことです。

 この方向性は当然と言えるでしょう。民主党・菅直人政権時に作られた “めちゃくちゃな制度設計” が少し是正されることになるからです。ただ、明らかに不十分であり、さらなる買取価格の引き下げが必須と言わざるを得ないでしょう。

 

 経済産業省は、再生エネルギー政策の核となる太陽光発電の「固定価格買い取り制度(FIT)」を大幅に見直す。普及のため、高い価格での買い取りを認定されながらまだ稼働していない業者に対し、稼働までの期限を設けて選別し、買い取り価格を下げる。FITの費用は一般家庭などが支払う電気料金に上乗せされている。消費者の費用負担を抑えつつ、長期的に稼働を促す狙いがある。

 再生可能エネルギーを普及させるには「競争力のある発電方法が存在すること」が絶対条件です。

 しかし、現状は「高価格での全量固定買取」が保障された補助金事業に過ぎません。そのため、「儲け」に目がくらんだ事業者が乱開発を行うなど、『自然や環境に配慮したエネルギー源』とは真逆の存在になっているのです。

 したがって、速やかに是正されなければ、再生可能エネに対する印象は悪化し続けるだけになるでしょう。

 

“市場価格よりも極めて高額な買取価格” が保障されている太陽光発電

 太陽光発電の “異常な高価格での全量買取” は民主党・菅直人政権の遺産です。東日本大震災を機に原発を悪者化し、ヨーロッパで太陽光の買取価格が下落していたことを無視し、40円台/1kW の高価格で買い取る制度を成立させたのです。

 これにより、電力消費者は『再生可能エネルギー割賦金』という形で負担が増加することになりました。

 FIT (全量固定買取制度)で儲けたのは資金を用意できる事業者やその関係者です。「40円台/1kW の高価格で電力会社に20年間買い取らせる権利」を手にした訳ですから、バブルが発生します。

 設備コストが下がれば、下がった分だけ事業者の儲けは増えます。また、発電する気はなくても『権利』を取得し、転売することで “利ざや” を手にすることが可能です。

 こうした事業者の儲けは電力消費者が強制的に負担させられている『再生可能エネルギー割賦金』から捻出されているのです。ただ、マスコミは再生可能エネルギー事業者の肩を持った報道をしていることもあり、制度上の欠陥が是正される動きは鈍いと言えるでしょう。

 

ベースロード電源にはならない太陽光発電に高額買取を保障し続ける必要はあるのか

 まず、異常なまで太陽光発電が優遇されている現状を改善する必要があります。

  • 発電できるのは “日中” のみ
    → 夜間・曇り・雨天・積雪時には発電不可能
  • 台風や水害に対して脆弱
  • 発電量を調整する能力を持たない

 上述のような問題点があるにも関わらず、FIT による高価格での買取が保障されていることは問題と言わざるを得ません。

 なぜなら、太陽光発電の導入によって起きる弊害を電力会社が “尻拭い” をし、消費者が電気料金で強制的に再生可能エネ事業者を下支えさせられているからです。『ベースロード電源』として一定の発電量を維持できない現状の太陽光発電に高い買取価格を保障するだけの価値はないと言えるでしょう。

 

原発より高いコストを強いる太陽光発電事業者に「原発より優先せよ」との要求を口にする資格はない

 10月13日と14日には九州電力の管内で「太陽光発電に対する出力制御」が行われ、太陽光発電事業者から不満の声が出ています。しかし、文句を言う資格はありません。

 『需要』がないなら、『供給』が制限されるのは当然です。それとも、「太陽光発電では “押し売り” を容認すべき」と主張するのでしょうか。

 晴天でも太陽光発電所に雲がかかれば、発電量はダウンします。そうした状況に備えたバックアップ電源が準備されていなければ、大規模停電(=ブラックアウト)が発生するのです。安定供給に阻害する側の再生可能エネルギーが『供給』を拒絶されるのは妥当な判断だと言えるでしょう。

 また、「原発よりも太陽光発電を優先すべき」との主張がありますが、『高コスト』かつ『発電量が安定しない』電源を優遇する経営的理由はありません。なぜなら、市場で売れる見込みが極めて低いからです。

 「市場で売れないから、『再生可能エネルギー割賦金』という形で電力消費者に有無を言わせず強制購入させている」に過ぎないのです。“歪められた制度” は速やかに是正する必要があるでしょう。

 

 少なくとも、割高な電気代を支払いたくない消費者の選択肢が強制的に剥奪されている現状は改善する必要があると言えるのではないでしょうか。