巨人がセリーグの覇権を取り戻すには「打線として機能すること」と「ブルペン陣の整備・底上げ」が必要不可欠

 2018年のプロ野球はレギュラーシーズンが終了に近づき、ほとんどのチームが来年以降の編成に注力し始めています。

 セリーグは広島カープが圧倒的な強さを見せたため、それを止めらるチームが出てくるかが鍵になるでしょう。プロ野球は “興業” ですので、「集客能力のある人気チームの低迷」はマイナス面が大きくなります。

 その代表例の1つが巨人であり、“強いジャイアンツ” が復活することは必要と言えるでしょう。

 

巨人は “打撃型のチーム” を目指すべき

 まず、巨人の方向性は「打撃型チーム」を目指すべきでしょう。なぜなら、狭い東京ドームを本拠地にしているため、「守り勝つ野球」をするには適していないからです。

 しかし、統一球が導入された時にリーグ全体が貧打に喘ぎ、当時の原監督が “スモール・ベースボール” に舵を切ってしまいました。その代償が現在も出ているのです。

 この中途半端な状態を解消することが高橋監督からバトンを引き継いだ原監督の最優先項目の1つと言えるでしょう。

 「小技を絡めて、1点を取りに行く姿勢」は大事です。ただ、今の巨人はそれができないことがデータで現れています。打線として機能していないのですから、肝心な場面で点が取れなくなってしまうのです。

 

「チーム打率3位の広島がリーグ1位の得点を記録した」という現状

 野球は「チームの得点数を競うスポーツ」です。したがって、『チームの得点数』が『個人の打撃成績』よりも優先して評価しなければならない指標です。

 強力打線のイメージがある広島カープですが、以外にも今シーズンはチーム打率もチーム本塁打数もリーグ1位ではありません。それでも、リーグトップの得点数を記録しているのには理由があります。

表:主要選手の打撃成績(2018年)
打率 本塁打 四球 併殺
田中 広輔 .262 10 75 6
菊池 涼介 .233 13 51 5
丸 佳浩 .306 39 130 5
鈴木 誠也 .320 30 88 4
広島(総得点:721) .262 175 599 85
坂口 智隆 .317 3 75 15
青木 宣親 .327 10 51 13
山田 哲人 .315 34 106 8
バレンティン .268 38 85 15
ヤクルト(総得点:658) .266 135 561 112
坂本 勇人 .345 18 61 4
吉川 尚輝 .253 4 19 5
マギー .285 21 41 12
岡本 和真 .309 33 72 11
巨人(総得点:625) .257 152 465 100

 その理由は「四球数がリーグ最多で、併殺打がリーグ最小」だからです。得点の可能性が高いのは上位打線の時ですが、カープの上位打線は相手に簡単にアウトを献上しないのです。そのため、得点数が上がっているのだと言えるでしょう。

 一方、リーグトップのチーム打率を記録したヤクルトは「チーム本塁打数」と「併殺打」で差を付けられました。中でも坂口・青木という左打者で走力のある2選手が2桁の併殺打を記録している点は改善したいところです。

 

「四球を選べないフリースインガーが多すぎること」が巨人の問題

 広島とヤクルトで打線上位を務めた4選手はチーム全体が選んだ四球の 55% を記録しています。しかし、巨人はこれら2チームよりも四球が100ほど少ない上、上位打線を務めた4選手の四球数は 40% 強です。

 これでは得点数は伸びないでしょう。もちろん、早打ちでも結果を残せる選手はいますが、その場合は打率3割を超えてもらわないと話になりません。最低でも2割8分は必須でしょう。

 ところが、その要件を満たす選手がほとんど見当たらないのです。シーズンを通して上位打線の一角を担ったマギー選手の41四球がチーム3位なのですから、四球を選べる打者を新たに最低でも1人上位打線に組み込めなければ、来季以降も得点力不足が続く可能性が高いと思われます。

 そのため、FA 市場や助っ人外国人選手はこの点に重きを置いた補強をする必要があると言えるでしょう。また、トレードという形で選手を入れ替えられるなら、こちらも考慮すべき点です。

 

投手陣は「ブルペン陣の整理・底上げ」が最優先事項

 一方で巨人の投手陣はセリーグで唯一の3点台(3.79)を記録するなど、投壊とは言えません。ただ、先発陣は試合を作れるが、ブルペン陣が接戦で失点して試合を落とすことが散見されていました。

  • 先発陣
    • 右:菅野(29)、山口(31)、畠(24)、ヤングマン(28)
    • 左:メルセデス(24)、今村(24)、吉川(30)、田口(23)、内海(36)
  • ブルペン陣
    • 右:マシソン(34)、アダメス(24)、沢村(30)、宮國(26)
    • 左:池田(25)、中川(24)

 タイプとしては「球の力で相手を捻じ伏せる投手」がブルペン陣には多く備えています。制球力に定評のある投手が少なく、四球を絡めた失点で追いつかれるリスクを軽視することはできません。

 そのため、“四球で自滅する可能性の低い投手” を『ブルペン陣の軸』に据えた再編が不可避と言えるでしょう。

 

 巨人は『チーム再建モード』に入ることが容認されないチームです。ドラフト・FA・トレードを上手く活用し、チーム力を維持することができるかが注目点になります。

 まずは原辰徳監督が巨人の現状をどのように認識した上で今月末のドラフトに臨むのかが注目点と言えるのではないでしょうか。