プロ野球選手会が「巨人・山口俊への処分が重すぎる」との声明を出し、世間の反感を招く

 「日本ではスポーツビジネスが根付いている」とは言えない事件が起きました。巨人の山口俊投手が飲酒による暴行トラブルを起こしたのですが、「球団が選手に下した処分が重すぎる」と選手会が批判する声明(PDF)を発表したのです。

 1リーグ制への移行という話が出ていた当時、世間は選手会側の味方となりました。しかし、今回の件についてはアンチ巨人であっても球団側の味方をする人が多数派となるでしょう。

 

1:暴行トラブルを起こせば、一般社会では懲戒解雇が濃厚

 プロ野球選手会は「処分が重すぎる」と巨人軍の対応を批判しています。ちなみに、巨人が山口俊投手に科した処分は以下のものです。

  • 出場停止
  • 罰金および減俸(総額1億円以上)

 これがどれだけ重たいかは選手の契約内容に依存します。年俸1億円なら、とてつもない痛手です。

 しかし、年俸3億を得ているなら、約33%の減給ということになり、4ヶ月分の給与がカットされたことと同じになります。不祥事を起こした企業の役員が「〇ヶ月の役員報酬カット」というペナルティは一般的であり、重すぎる処分と感じる人は少ないでしょう。

 一般社会なら、“暴行トラブル” を起こした社員は企業から懲戒解雇されても不思議ではありません。減給に処分が留まったとしても、労組が「処分が重すぎる」との声明文を出すことなどありえないことを選手会を知らなければなりません。

 

 

2:後出しジャンケン的に批判声明を発表する選手会は無能である

 「巨人が契約解除をチラつかせて、複数年契約の見直しを迫ったと批判する選手会ですが、声明文を発表するタイミングを間違っています。

 山口俊投手が問題を起こしたのは7月11日の未明。謝罪会見は8月18日に行われました。その期間内に山口投手と巨人の “話し合い” が行われているのですが、選手会が発表した声明文には以下の文言があるからです。

 本件に関する処分や契約見直しに関しては、当会としてもその過程で対象選手から事情を聴取し、巨人軍と交渉を行うなどして状況を把握しております。その経緯から、巨人軍は優越的な地位を乱用し、弱い立場にいる対象選手にこれを強要したものと判断しました。

 選手会が巨人軍と交渉をしていたなら、なぜ交渉の場で “選手会が持つ懸念点” を伝えなかったのでしょうか

 「山口投手が弱い立場に置かれ困っている」のであれば、その時点で選手会として徹底的に守らなければなりません。謝罪会見が行われた10日後になって「むりやり契約内容を見直された」などと主張しても、説得力に欠けるのです。

 

3:正社員でも問題を起こせば、解雇・減給が待っている

 「FA 権は選手が長期の活躍に渡り獲得したもの」という主張はその通りです。しかし、問題を起こした選手はその権利を剥奪されても文句は言えません。

 「楽天の社員」や「中日新聞の社員」が “暴行トラブル” を起こせば、定年まで約束されていた『正社員の権利』を剥奪されるはずです。重すぎる処分と言えるでしょうか。

 法律を守るだけではなく、コンプライアンスの遵守も企業は求めれています。野球で例えるなら、ルールブックに記載されている内容を守ることはもちろんのこと、フェアプレーを徹底しようという流れが世間ではできているのです。

 今夏の高校野球で大阪桐蔭の一塁手に蹴りを入れた仙台育英の捕手に厳しい批判が飛んだのはそうした流れが影響していると言えるでしょう。野球でスターになれば、球場外での “やんちゃ” が見逃されるという考えは時代遅れになりつつあることを自覚しなければなりません。

 

 トラブルを起こすほど酔っ払っている時点で弁解の余地はありませんし、断酒宣言すら公の場で宣言できなかったのですから、厳しい立場に置かれているのは山口俊投手自身が自覚していることでしょう。選手会は不用意な声明を最悪のタイミングで発表したことで “ヤブヘビ” になったと言えるのではないでしょうか。