巨人、育成1位の山下航汰選手を支配下登録にしたと発表 高卒1年目での1軍登録が現実味を帯びる

 「巨人が2018年の育成ドラフトで1位指名した山下航汰選手を支配下登録した」とスポーツ報知が伝えています。

 2軍(= ファーム)で3割を超える打率を残していましたし、支配下登録は「極めて妥当」と言えるでしょう。ただ、「プロテクト必須の逸材」でもあるだけに驚きを禁じえない判断とも言えるはずです。

 

山下航汰選手が「1軍で試したい打力を持った選手」であることは揺るぎようのない事実

 山下選手がファーム(= 2軍戦)で支配下登録されるまでに残した成績は「 .316・3本塁打・18打点」です。また、2塁打は13本、3塁打は4本を記録しています。

 そのため、少なく見積もったとしても「1軍で試したい打力を持った選手」と言えるでしょう。

 ただ、1軍に昇格させるには『支配下登録』であることが条件です。山下選手は『育成契約』でしたから、「どのタイミングで支配下に切り替えるか」が焦点でした。

 なぜなら、支配下登録の選手は「FA による人的補償の対象」となるからです。「2軍で抜きん出た打力を示している高卒1年目の選手」がプロテクト枠から外れていれば、ほとんどの球団が人的補償として指名することでしょう。

 したがって、「今年は育成登録のままで終える(= 人的補償の対象外にする)」という判断が球団的には合理的だったはずです。しかし、このタイミングで支配下登録に切り替えたのですから、残りシーズンで「1軍での起用を考えている」とのことだと考えられます。

 

なぜ、山下選手が育成ドラフトでしか指名されなかったのか

 ファームで別格の打力を見せている山下選手ですが、2018年のドラフトでは12球団から指名されることはありませんでした。ただ、これは止むを得ないと言えるでしょう。なぜなら、指名することが難しい選手だったからです。

 高卒選手をドラフトで指名するのは「プロでの活躍を予感させるポテンシャル」を有していることが求められます。

 ごく一部の例外的な選手を除き、高卒選手は「原石の状態」で加入します。つまり、「体格」「パワー」「地肩の強さ」「走力」など目立ったセールスポイントを持ち合わせていないと、ドラフトで指名しにくいのです。

 山下選手はこのケースに該当していました。プロ選手の中では「小柄な体格」であり、高校通算本塁打も金属バットによる “上振れ補正” があります。

 守備力やトップスピードがプロで通用するという確信がない限り、支配下登録枠を埋めるドラフトでの指名は躊躇する球団が出てくるのは当然と言えるでしょう。

 

「プロのボールに適応できるミート力を持っているか」はプロにならないと正確に判断できない

 どれだけパワーを持っていても、ボールに当てることができなければ話になりません。この部分を測るのは「ミート力」という項目なのですが、アマチュアとプロでは投手のレベルが大きく異なります。

 中でも「変化球の精度」が顕著な違いとなっており、これを「木製バット(の芯)でどれだけ捉えられるか」がポイントです。

 ただ、アマチュアの打者がプロ野球の投手と対戦する機会はまずありません。そのため、どれだけ見る目のあるプロのスカウト陣でも『アマチュア打者のミート力』がプロ野球1年目でどれだけ通用するかを正確に測定することは不可能なのです。

 それができるなら、どこかの球団が2018年ドラフト会議の下位で山下航汰選手を指名していたことでしょう。しかし、どの球団も指名を見送った現実が「逸材を見極める難しさ」を示していると言えるでしょう。

 

「1軍で通用するための課題」を浮き彫りにするためにも早期1軍昇格の価値はある

 おそらく、山下選手は近日中に1軍昇格となるでしょう。これは「1軍で通用するための課題」を早期に洗い出しておくほど、2軍戦で対処に向けた時間を多く作ることが可能になるからです。

 高卒1年目のプロ初年度ですから、「シーズンを通して戦える身体作り」も重要な課題です。

 それとは別に「克服しなければならない個人的な課題」が明確になっていると、体力アップと並行して取り組むことも可能です。その結果、より大きな成長曲線を描くことが可能になる効果は大きいと言えるはずです。

 丸選手や亀井選手という “お手本” がいるのですから、1軍に帯同するだけでも大きな財産となると言えるのではないでしょうか。