「日本人の母親が連れ去った子供はアメリカ人の父親には渡さない」と富山家裁が決定を出す
アメリカで離婚後、日本人の母親が子供を日本に連れ去っていた件でアメリカ人の父親から「子供の引き渡し」を求めて争っていた審判で富山家裁は「子供の引き渡しを認めない」との判決を下したと NHK が伝えています。
この判決は良いものとは言えないでしょう。なぜなら、明らかにルールを破った側である母親側にとって納得できるものになっているからです。
富山家庭裁判所の原啓一郎裁判長は、今月5日付けの決定で「母親は子どものパスポートを不正に入手したうえ、アメリカの裁判所が定めた養育計画に違反して子どもを連れ去っていて、強い非難に値する」として母親が子どもを養育する権利を認めませんでした。
一方で、父親が求めていた子どもの引き渡しについても「子ども自身の意思に反する」として認めませんでした。父親は「日本の司法は違法な行為を認めていると言わざるをえない。非常につらく、悲しい」と話していました。
母親(日本人)は離婚後に父親(アメリカ人)と暮らす子供をアメリカの裁判所が定めた養育計画に反する形で日本に連れ帰ったのです。父親サイドに落ち度があったのであれば、それをアメリカで訴えてから、親権を取り、日本に戻れば良かったことです。
しかし、正規の手続きを踏まずに子供を連れ去りました。この手法が認めれるのであれば、法治国家とは言えないでしょう。
1:母親に養育権がないことは当然だが、祖父母(母親の両親)が持てば意味がない
子供のパスポートを不正入手し、日本に連れ去るような母親に養育権を認めないことは当然です。
ただ、母親の両親である祖父母に子供の養育権が認められれば、母親が養育権を持っていることと同じです。そのため、「誰が子供の養育権を持っているのか」ということは大きなことと言えるでしょう。
アメリカの裁判所で定められた養育計画では父親側が育てることで決着していたのです。それにもかかわらず、“連れ去った側” が得をするような結果にはなってはならないと言えるはずです。
2:“子供の意思” を鵜呑みにした上での判決は危険だ
富山家裁の判決で注目すべき点として「父親側が求めた子供の引き渡しを認めなかった」こともあげることができます。理由として “子供の意思” を述べていますが、これを鵜呑みにすることは危険です。
なぜなら、母親に連れ去られ、生活を共にした6年間で「父親が悪い」と吹き込まれていることが考えられるからです。
離婚後に相手のことを悪く言う人は存在します。離婚後の生活でストレスが溜まることが起きれば、「このようなことになったのは離婚した相手が原因」との言い訳ができてしまうからです。
このような要素が含まれていることを家裁は留意しなければならないのです。
アメリカで生活していた子供を日本人の母親が勝手に連れ去ったのです。母親の採った行動を擁護する理由は残念ながら存在しません。
「ハーグ条約が締結される前のこと」という理由も擁護にすらならないでしょう。アメリカ人の父親に落ち度がなかったから、「父親が子供を養育する」という計画がアメリカの裁判所で容認されていたと推測できるからです。
“サーキットブレーカー” のように「母親が連れ去る前の状況に戻さなければならない」との判決を下すべきだったと言えるのではないでしょうか。