「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」、小池百合子氏が都知事選に勝利

 7月31日に投開票が行われた東京都知事選挙は小池百合子氏が自民・公明が推薦した増田寛也氏や野党4党が推薦した鳥越俊太郎氏に100万票以上の差をつけ、当選しました。

 既存政党の支援を受けずに当選したのですが、有力候補と見られた2名は最後まで強さを発揮できなかったことが得票差に現れたと言えるでしょう。

 

 まず、“野党共闘” の枠組みで出馬した鳥越俊太郎氏ですが、序盤戦の知名度しか武器がない状態でした。

 『著名人』を後出しじゃんけんで出馬させ、その流れで選挙戦を乗り切る。情報の伝達手段がテレビや新聞に限定されていれば、十分乗り切れたでしょう。政策論争が本格化するまでに投票日がやって来たからです。

 

 しかし、現在はネットがあり、情報の消費スピードが過去と比較すると、尋常でないほど上がっています。その中で、適当な演説を繰り返せば、「都政と国政を勘違いした “痛い候補”」として有権者に広まってしまいます。また、ネットで広まった情報はテレビや新聞を作る側も見ているのですから、『話題』として取り上げられ、無視することは難しくなります。

 政策を軽視し、“反自民” の票を結集させることを狙っていた鳥越陣営ですが、週刊誌に報じられた女性スキャンダルで逆風が強まります。「事実無根」と週刊誌を告訴しましたが、証言をした女性の夫や女性自身に対しては告訴していないのです。なぜ、告訴しなかったのでしょう。

画像:鳥越候補を応援した女性弁士たち

 また、鳥越氏を応援した女性弁士たちは「キスぐらい誰でも経験がある」など被害女性に泣き寝入りを強いるような発言を連発しており、フェミニストという看板を党利党略のために使っている実態も明らかとなりました。

 「3日もあれば、十分だ」と宣言していたものが、実際には選挙戦の期間中に数々の致命的なボロを出し、有権者が敬遠したことが敗因と言えるでしょう。

 

 次に増田寛也氏ですが、急遽お鉢が回ってきたという立場から抜け出せず、知名度で大きな遅れを取り、選挙戦をスタートさせました。

 増田氏の武器は『自民党と公明党の組織力』だったのですが、機能不全に陥ります。その最大の理由は都議会自民党の対応と言えるでしょう。

 小池百合子氏は郵政選挙で刺客として衆議院・東京10区に送り込まれた “外様” という存在です。外部から来た人物が東京のトップに立つということは、都議会側からすれば、オモシロイことではありません。そのため、組織の引き締めにかかったのですが、ことごとく手段を間違えました。

 まず、支援した増田候補以外を応援すると本人・家族・親族を含め除名するという通達を出し、これがネットで「時代遅れ」と批判されます。その後、応援に入った石原慎太郎・元都知事が小池氏のことを「厚化粧」と揶揄し、鳥越氏から流れ出た無党派層の票を陣営側が受け入れを拒否する結果となってしまいます。

 また、増田氏が総務大臣時代に東京都が得た法人税を地方に流す仕組みを作ったこともマイナスに作用しました。都の税収を盗む仕組みを作った張本人が東京都のために働くことができるのかが疑問視され、結局は “都議会のドン” の操り人形に終わる懸念を払拭できず、票を伸ばすことはできませんでした。

 

 勝利した小池氏ですが、選挙戦における “勘の良さ” はどの候補よりも優れていたと言えるでしょう。

 メディアが見出しに使えるワードを入れた出馬会見を行い、都議会自民党からの支援を受けれそうにないと判断すると無所属で戦い抜くことを決断します。女性候補でしたが、“女” を武器にするのではなく、“政治家・小池百合子” を武器にドブ板を徹底したことが勢いを継続できた要因だと思われます。

 ここからは小池百合子・東京都知事がどういった政治手腕を見せるのかが評価基準となります。

 小池氏に都知事選で敗れた有力候補2名(増田氏と鳥越氏)はどちらも「密室で決められた候補者」でした。日頃、「安倍政権は独裁だ」と批判している野党が推薦する候補者が密室で決められていたことを重く受け止めなければなりません。

 “密室で決めようとする体質” が有権者に嫌われることは『古い自民党』が瓦解したことからも明らかです。したがって、仮に密室で会議を開催するのであれば、決定に至るまでの議論の過程を明らかにし、生じた疑問に対して説明責任を負うことが最低条件になります。

 東京都が抱える問題に対し、具体的な解決策を提示し、それを実行することができるかだけの手腕を有しているかが鍵になるでしょう。与党である都議会自民党がどういった出方をするのか。今後の行方に注目です。