茨城県知事選で自公が推薦する新人が現職を破り当選、マスコミは横浜市長選と同様の対応をする

 8月27日に投開票された茨城県知事選挙で自民党・公明党が推薦する新人の大井川和彦氏が勝利したと朝日新聞が伝えています。

 現職の橋本昌氏が敗けるという地方選では異例の展開です。橋本氏が選挙戦で「原発再稼動反対」を打ち出していたこともあり、反原発を訴える朝日新聞や野党の目論見は外れたと言えそうです。

 

 茨城県知事選は27日に投開票され、自民、公明が推薦する新顔の大井川和彦氏(53)が、7選をめざした現職の橋本昌氏(71)、新顔の鶴田真子美氏(52)を破り、初当選を決めた。内閣改造後初の知事選で、安倍政権は10月の衆院3補選の前哨戦と位置づけて大井川氏を全面支援した。惨敗した7月の東京都議選で対立した公明党との選挙協力も奏功し、政権運営は一息つく形になる。投票率は43・48%(前回31・74%)。

 

 “保守系の分裂” と報じていたマスコミでしたが、政党として分裂していたとは言えない状況でした。

 与党は大井川氏を推薦。民進党は連合が橋本氏を推し、共産党との連携に前向きな一部が鶴田氏を支援するという形だったからです。「組織票の勝負では苦しい」と見た橋本陣営が無党派層の票を獲得するために “反原発” を打ち出したものの結果が伴わなかったと言えるでしょう。

 

1:多選すぎると無党派層にあまり歓迎されない

 茨城県知事の開票結果は下表のとおりです。

表1:2017 茨城県知事選の開票結果
  候補者 得票数
大井川 和彦
(無・新:自民・公明推薦)
497,361
  橋本 昌
(無・現)
427,743
  鶴田 真子美
(無・新:共産党推薦)
122,013

 7選を目指した現職の橋本氏(71)を大井川氏(53)が約7万票差で下す結果となりました。並外れた実績を残し続けていないかぎり、“多選” のイメージは良くありません

 どの任期においても成果を出していれば問題ないのですが、そのような政治家は例外中の例外です。「国からの補助金に頼らず、県政運営を行い、県の経済が好調を維持している」ということが指標と言えますが、そうした事例に該当する道府県は皆無と言えるでしょう。

 つまり、絶対数の多い無党派層に対して、“多選” を認めさせるための明確な根拠を提示することは極めて難しいのです。

 

2:“反原発” でポピュリズムに走り、追い上げとはならず

 自民党と公明党が橋本氏の対立候補である大井川氏を推薦しているため、橋本氏が7選を果たすには無党派層を取り込む必要があります。

 そのための選挙戦術が「反原発」だったのです。反原発を主張すれば、朝日新聞や毎日新聞は政治姿勢を好意的に報じます。それにより、無党派層への浸透を図れるはずと判断したのでしょう。

 しかし、代替電源についての言及もなく、電気代が上昇することが明らかな反原発を推進すると明言すれば、産業界からの反発を招きます。

 “革新的な技術” で原子力発電を駆逐するのではなく、“政治的な決断” で除外しようとしているのですから、損害を被る有権者の恨みを買うことになるのです。脱原発を掲げて国政選挙に挑み、痛い目を見た政党が多数あったのですが、そのことを忘れている時点で政治家として潮時を迎えていたと言えるでしょう。

 

3:横浜市長選で与党推薦の現職が勝っており、安倍政権の2連勝

 「自らの報道で政権を倒したい」という欲望を持つマスコミは与党にネガティブな報道を好む傾向にあります。与党が敗れたり、苦戦した選挙は取り上げる頻度が高いのですが、勝利した選挙は「驕るな、民意を勘違いするな」と注文を付けるといった姿勢からも確認が可能です。

表2:2017年に行われた主な地方選挙
7月2日 東京都議会議員選挙で自民党が大敗
7月23日 仙台市長選で民進・社民・共産が推薦する郡和子氏(民進党・元衆院議員)が当選
7月30日 横浜市長選で自民・公明が推薦する現職の林文子氏が当選
8月27日 茨城県知事選で自民・公明が推薦する新人の大井川和彦氏が当選

 マスコミでは『都議会議員選』と『仙台市長選』は取り上げますが、『横浜市長選』は “なかったこと” にされています。正しく報じるなら、「横浜市長選で野党に傾きつつあった流れを食い止め、茨城県知事選でそれを確固たるものにしつつある」となるでしょう。

 しかし、そのような報道はほとんどない状況です。“世論の工作員” として活動するマスコミが報じるニュースには「誘導したい結論に対して都合の悪い情報はフィルタリングされている可能性が大いにある」ことを念頭に置いた上で触れる必要があると言えるのではないでしょうか。