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小池東京都知事の勘違い:豊洲に費やした6000億円は既にサンクコストである

社会

 築地市場の豊洲移転を巡り、「有害物質が検出された」とメディアが騒いでいます。

 おそらく、夏の都議選で小池知事が都議会自民党との対決姿勢を打ち出すために混乱を煽り続けることでしょう。しかし、毎日新聞に語ったサンクコストに対する考え方は間違っていることを指摘しなければなりません。

 

 移転を中止すれば、整備費の約6000億円が事業を撤退・縮小しても回収できない費用の「サンクコスト」になると指摘する一方で、移転すれば有害物質が検出されたことによる土壌汚染対策費や、運営に必要な光熱費などが増大するとの見方を示した。小池知事は「土壌汚染対策だけで900億円近くかけたのに安心・安全が確保されていないのは、いかがなものか。サンクコストにならないためにどうすべきか、客観的・現実的に考えていくべきだ」と述べた。

 

 

 小池知事は「サンクコスト」の意味を取り違えています。「サンクコスト」とは事業・行為に投下したが、取り戻すことのできない資金・労力のことを指します。

 豊洲市場の現状については下図で示すことができるでしょう。

画像:豊洲市場の現状

 豊洲市場への移転を実行しても、中止しても、建設済のコストが戻って来ることはありません。そのため、小池知事が「サンクコストにならないためにどうすべきか」という部分は明らかな間違いです。

 

 「行政の長」に求められることは今後必要となるコストを計算した上で、豊洲への移転問題に道筋を示すことです。飲料水として用いることのない地下水に『飲料水用途の環境基準』を適応して騒ぐほど滑稽なものはありません。

 「東京都は6000億円ぐらい平気で捨てられる財力がある」とアピールする目的なら、それでも良いでしょう。しかし、五輪での施設建設にコスト削減を掲げる姿勢と矛盾するものであり、批判を招くことは避けられないと思われます。

  1. 豊洲市場に移転
    • 豊洲市場の維持費(支出)
    • 豊洲市場で検出された有害物質への対策費(支出)
  2. 移転中止・築地市場の継続
    • 豊洲市場の維持費(支出)
    • 築地市場の維持費+衛生管理費(支出)
    • 豊洲市場の売却益(収入)
  3. 移転中止・第三の新市場を建設
    • 豊洲市場の維持費(支出)
    • 新市場の建設費+維持費(支出)
    • 豊洲市場の売却益(収入)

 現在は稼働していない豊洲市場に買い手がつかない限り、売却益を手にすることはできません。また、食品市場として利用目的で建設したこともあり、高値は付きにくいと言えるでしょう。

 

 豊洲市場の建設に費やした6000億円は既にサンクコストになっており、移転中止によってサンクコストではなくなるという訳ではありません。

 築地市場を残すのであれば、地面に魚を転がすなど衛生状態が懸念される築地の現状が豊洲市場への移転による費用価値を上回る場合に限定されるでしょう。火災などのリスク要素を考慮すると、移転に踏み切る方がコストパフォーマンスは良い計算が成り立ちます。

 感情論を先行させ、メディアを煽り、都議会で議席数を伸ばすという “政局” を目的に利用する上では豊洲問題は格好のネタです。しかし、それで利益を得られるのは知事派の界隈だけに限定されるということを覚えておく必要があります。