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「憲法9条3項として、自衛隊を明記する “加憲” による憲法改正」を安倍首相が明言

 「憲法9条を守れば、アジア太平洋地域に平和と安定がもたらされる」と朝日新聞が5月4日付の社説で頓珍漢な主張をする一方で、読売新聞は安倍首相へのインタビューで「憲法9条に自衛隊の存在を明記する」と述べたことを公明党などが理解していると報じています。

 護憲派にとっては驚きの展開と言えるでしょう。しかし、その原因を作ったのは他ならぬ護憲派自身です。“加憲” という形で堂々と憲法改正を訴えた与党に対し、説得力のある反論が行われるかが注目点です。

 

 安倍首相(自民党総裁)が読売新聞のインタビューで戦争放棄などを定めた9条1項、2項を維持した上で、自衛隊の根拠規定を追加するよう訴えたことについて、公明党から理解を示す声が上がった。憲法改正に積極的な日本維新の会も首相の発言を歓迎している。自公両党と維新を中心に、改憲に向けた調整が進むことになる。

 首相はインタビューで、9条に自衛隊の根拠規定を追加する案に言及した。3日には東京都内で開かれた改憲派の集会にビデオメッセージを寄せ、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と述べ、改めて20年の施行を目指す方針を打ち出した。

 

 安倍首相が読売新聞に語ったインタビューと改憲派の集会に寄せたビデオメッセージで触れた改憲項目はどちらも同じです。

 「憲法に自衛隊の存在を明記すること」と「高等教育の無償化を盛り込むこと」の2点がメインであり、改憲に前向きな政党からの支持を取り付ける内容となっています。教育無償化はバラマキとの批判が出ることが予想されますが、“自衛隊の存在” を真っ向から否定することはかなり高度な戦術が要求されることになります。

 憲法学者の多数が自衛隊を違憲と見なす中、国のために任務を全うすることを求めるのは矛盾する」と改正の必要性を述べられた以上、切れるカードが限定されることになるからです。

 

 例えば、「災害時の緊急事態条項に絞り、憲法改正を行う」という選択肢も護憲派にはありました。“本丸” である憲法9条を維持するための時間稼ぎという面もあったのですが、「お試し的なものは認めない」と拒絶したことで、正面から憲法改正を突きつけられることとなったのです。

  • 第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
  • 2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
  • 3 (自衛隊の存在根拠を記述)

 現行憲法では『自衛隊は違憲』と見る憲法学者が多数派です。ただ、「自衛隊の存在そのものを認めない人」と「自衛隊の存在は認めるが、憲法の条文を読む限り違憲と考える人」の2つに分類できます。

 前者には「自衛隊を解散させて、どのように国防を守るのか」を明確する責務があります。一方の後者は「では、どうのように憲法を改正すれば合憲と言えるのか」が問われることになるでしょう。

 

 苦しい立場に追い込まれたのは「憲法9条を守れ」と主張してきた野党です。安保法制の際、「安保法制は憲法違反だ」と憲法学者による見解を振りかざし、法案を廃案にするために活動してきました。

 これが「自衛隊の存在を憲法に追加する」という安倍首相による “加憲” の意思表明の前では逆に作用することになるのです。

 安保法制が国会で審議された時、朝日新聞や野党は「堂々と憲法を改正してやるべきだ、解釈改憲をすべきでない」と批判しました。それが “加憲” という形で彼らの目の前に現れたのです。憲法を改正して自衛隊を合憲とするために明記するか、憲法を守って自衛隊を解散させるかの二者択一です。

 

 現実的な主張をすることがなかった護憲派にとっては「イバラの道」が待ち受けていることでしょう。しかし、“平和ボケ” の人が多数派であれば、自衛隊解散というまさかの事態が起きることは十分に考えられることです。

 憲法改正が実際に動き出した際に、メディアが正確な情報をきちんと報じることができるのか。最大の懸念点は “偏りすぎたマスコミ” と言えるのではないでしょうか。