新聞協会は「匿名社会が深刻化」と主張する前に、ニュース記事と映像の作成責任者を明記すべきだ

 新聞協会が個人情報保護法の改正によって「匿名社会が深刻化している」との声明を発表したと NHK が報じています。

 この主張は失笑ものと言えるでしょう。なぜなら、“匿名社会” の恩恵を最も享受しているのは新聞社やテレビ局に代表されるマスコミだからです。

 

 声明は平成17年に個人情報保護法が施行されて以降、自治会の名簿や学校の連絡網が作れないなど、緊急時に必要な情報の流通が妨げられているうえ、行政機関が懲戒処分を受けた公務員の実名を隠したり、警察当局が重大事件の被害者を匿名で発表したりすることが常態化するなど個人情報の保護を理由に社会のあらゆる分野で匿名化が進んでいると指摘しています。

 そして、改正個人情報保護法は対象となる個人情報の範囲を広げ、事業者に対し、個人情報の取り扱いについて従来よりも厳格な義務を課しており、このままでは社会全体にさらなる萎縮効果を及ぼし、匿名社会の深刻化につながるのは必至だという認識を示しています。

 

 匿名社会が当たり前になるとマスコミは 「商売上がったり」になるため反発しているに過ぎません。なぜなら、“匿名社会” による大きな恩恵を受けているのが他ならぬマスコミだからです。

 これまで自分たちだけが甘い汁を吸い、儲けを生み出してきた “シノギ” が是正される動きが進んだだけなのです。まずはマスコミ自身がこれまでの態度を改めなければなりません。

 

「記者やデスクの署名がなく、“関係者・関係筋” の見解による記事」は匿名社会そのもの

 記者やデスクの署名のない記事は “匿名社会” の恩恵を最大限に活用したものでしょう。新聞社やテレビ局の看板に隠れ、無責任な記事を発信し続けることができるのです。

 その上で、関係者や関係筋の名前を使い、都合良くストーリーを組み立てているのです。

 自分たちが匿名をフル活用しておきながら、世間で個人情報の取り扱いが規制へと進んだことに対し、「匿名社会が深刻化」と批判するのはムシが良すぎると言わざるを得ません。まずは自分たちが手本を示すべきです。

 

他人のプライバシーを自由に公開する権限はメディアにはない

 マスコミという巨大企業に隠れ、他人のプライバシーを暴露することで高給を得ている実態が世間に知れ渡ったことで反動を招いている。個人情報の保護が急速に進んだ理由はこの点が最も大きいと言えるでしょう。

 プライバシー権は個人が持つものであり、公開の権限はマスコミにはないのです。

 「 “報道目的” なら、個人情報保護法の規制対象にはならない」とありますが、昨今では誰もが報道側に回ることは可能です。「報道を目的とした個人サイトだ」と強弁すれば、抜け穴になることは簡単に想像できることでしょう。

 また、既存メディアは “報道” と語り、自社のイデオロギーを主張するという偏向が目立っています。論評を加えた時点で『事実を伝える報道』ではなくなる訳ですから、マスコミによる悪影響は無視できるレベルではないのです。

 

全記事を署名記事とし、番組はプロデューサー名と顔写真を公式サイトに明記せよ

 メディアが匿名社会に批判的な姿勢を採るのであれば、自らの情報を公開していることが必須です。自分たちの情報を隠したままでは説得力に欠けるからです。

 新聞であれば、すべての記事を署名記事とすべきでしょう。記者名に加え、記事を編集したデスクもウェブ版では併記することが最低限の条件となるはずです。

 NHK などテレビ局が放送する番組は内容を製作した責任を負うプロデューサーやディレクターを番組公式サイトで明らかにするべきです。きちんと取材を行った上で番組を作成しているのであれば、責任者が誰であるかを明確にすることへの抵抗感はないでしょう。

 いい加減な内容だと自覚していたり、事実を歪曲しているから匿名社会に逃げようとしているのではないでしょうか。

 

 「公務員の懲戒処分がプライバシーを盾に隠されることはけしからん」と主張するのであれば、まずはマスコミ自身の懲戒処分情報を完全公開としなければなりません。

 “社会の木鐸” などと誇らしげに名乗るのであれば、そのぐらいは行って当然です。自分たちだけが特権を享受できた時代は終わったのです。

 情報源として「関係筋」や「政府筋」という表現を平気で使う習慣は止めるべきですし、読者が出典元を確認できるよう参考資料は明記すべきであり、引用元がウェブサイトの場合はリンクを貼るべきでしょう。

 

 大学できちんとした論文指導を受けていれば、資料情報の明記は必須と教えられるはずです。また、盗用・歪曲などの手法はご法度であることを学んでいたはずです。社会人として当たり前のことがマスコミでは根付いていないことを反省し、改善することから始める必要があるのではないでしょうか。