平昌冬季五輪、女子フィギュアはロシア勢のメダル独占を阻止できるかが注目点となるだろう

 平昌冬季五輪まで1ヶ月を切りましたが、フィギュアスケート女子シングルは勢力図がほぼ決まったと言えるでしょう。

 金メダル争いはザギトワとメドベージェワのロシア人選手による一騎打ち。銅メダルを他の選手たちで争うという構図になっているからです。

 

1:2018 欧州選手権で別次元の争いを見せた2人

 ロシア・モスクワで行われた 2018 欧州選手権でザキトワ選手とメドベージェワ選手は他を圧倒するパフォーマンスを見せつけました。

  合計 SP FS
A・ザキトワ 238.24 80.27
(39番滑走)
157.97
(23番滑走)
E・メドベージェワ 232.86 78.57
(38番滑走)
154.29
(24番滑走)

 今シーズンがシニアデビューとなるザキトワ選手が合計238.24点で優勝。これは世界歴代2位の好成績であり、GP シリーズを転戦する中で成績を伸ばし続けている状況は「金メダルの本命候補」と呼ぶに相応しいでしょう。

 世界歴代最高得点である241.31点を持つメドベージェワ選手は232.86点で2位。右足中足骨の疲労骨折からの復帰初戦で復活を印象づけた内容でした。

 

 

2:SP でのミスが最後まで響くことになったメドベージェワ

 メドベージェワ選手が2位となった理由は SP のダブルアクセルでの着氷に失敗したことでしょう。回りすぎで両足着氷となり、 GOE で1点の減点となったことが大きく響くこととなりました。

  • ザキトワ(基礎点: 34.97|技術点: 43.99)
    1. 3Lz+3Lo : 12.21 (技: 13.61)
    2. 3F : 5.83 (技: 7.43)
    3. 2A : 3.63 (技: 4.34)
  • メドベージェワ(基礎点: 33.10|技術点: 40.43)
    1. 3F+3T : 10.56 (技: 11.86)
    2. 3Lo : 5.61 (技: 7.21)
    3. 2A : 3.63 (技: 2.63)

 もし、メドベージェワ選手が GOE で 0.5 を加算できるダブルアクセルの着氷に成功していれば、技術点は 1.5 点上乗せとなります。この時点でザキトワ選手の SP での点数とほぼ同じとなりますし、演技構成点の印象分も加算すれば、SP を終えてトップに立っていたと言えるでしょう。

 しかし、ビハインドを背負った状態で FS を迎えた上、直前に演技したザキトワ選手が世界歴代2位の好記録を叩き出した訳ですから、会場の雰囲気にやや飲まれることになったと考えられます。そのため、「SP の 2A での着氷ミスが最後まで響いた」と言えるはずです。

 

3:金メダル争いが熾烈を極めるかはメドベージェワのコンディション次第

 オリンピックでの金メダル争いがどれだけ熾烈なものになるかは「メドベージェワ選手のコンディション次第」と言えるでしょう。欧州選手権で復活を印象づけましたが、オリンピック本番でコンディションをピークに合わせる必要があるからです。

  • 世界国別対抗戦(2017年):241.31点
    • SP: 80.85点(基礎点:33.10)
    • FS: 160.46点(基礎点:62.33)
  • 欧州選手権(2018年):232.86点
    • SP: 78.57点(基礎点:33.10)
    • FS: 154.29点(基礎点:62.76)

 演技を構成する要素は世界最高得点を記録した時から大きな変化はありません。技の基礎点はザキトワ選手の方が高い状況なのですから、GOE や演技構成点で加点することで逆転することが金メダルには不可欠と言えるでしょう。

 メドベージェワ選手が本番をベストコンディションで迎えることができれば、金メダル争いはロシア勢2人による別次元の戦いが繰り広げられるものと予想されます。

 

 日本の代表選手にとっては銅メダルを獲得を目指した争いに参加することが現実的な目標となるでしょう。マスコミは「金メダル」と煽るでしょうが、他のアスリートにも敬意を払うことが必要と言えるのではないでしょうか。