『文芸春秋』、「内容を無断でまとめた手記」を使った森友問題への批判に手を染める

 自殺でなくなった近畿財務局の男性職員の遺族が『文芸春秋』の記事に対する抗議文を送っていたと神戸新聞が報じています。

 この指摘は2つの意味で大きな問題があるでしょう。1つは「文芸春秋の記事作成に関わる問題」、もう1つは「WTO が定める自殺報道の手引きに違反している問題」です。これらの問題行為はマスコミが自浄作用を機能させなければならないと言えるでしょう。

 

■ 文芸春秋が報じた記事

 週刊文春を発行することでも知られる文芸春秋は『月刊・文芸春秋』の2018年5月号で次のような記事を買いています。

画像:文芸春秋・2018年5月号

 この記事が「取材目的との説明がなく、発言内容を無断でまとめている」との抗議が正式に寄せられることとなったのです。メディアとして問題行動を起こしていると言えるでしょう。

 

■ 『文芸春秋』が報じた記事に含まれる問題点

1:遺族の代理人弁護士が「抗議文を送った」と明言

 自殺した近畿財務局の男性の遺族らの代理人弁護士が文芸春秋に対し、抗議文を送ったと神戸新聞が報じています。

 今年3月に自殺した財務省近畿財務局の男性職員を巡り、父親ら遺族の代理人弁護士は10日、月刊誌「文芸春秋」5月号の父親が語った内容だとする手記に関し「取材目的との説明がないまま発言した内容を無断でまとめており、記事掲載も了承していない」として、発行元の文芸春秋に抗議文を送ったと明らかにした。

 遺族側の訴えた内容が事実であれば、文芸春秋は廃刊にすべきです。それほど大きな問題を起こしていることを自覚する必要があると言えるでしょう。

 

2:無断で「手記」という形で記事にしたという問題

 まず、取材と宣言した上で引き出した発言ではない内容を無断でまとめたのです。記事の掲載を了承していないことに加え、発言内容を「手記」として掲載したことが問題です。

 「発言した内容」を記事するかの編集権は文芸春秋にあります。

 ただ、取材目的と説明せずに発言させ、それを「手記」として掲載する行為は批判されるべきものです。それとも、“メディアは取材目的を偽って引き出した内容” を基に記事を作成することが常態化しているのでしょうか。

 そうした行為が蔓延するほど、メディア・マスコミに対する不信感が強まるという現実に目を向ける必要があると言えるはずです。

 

3:文芸春秋の行為は「WTO の自殺報道に対する手引き」を無視するもの

 WTO は『自殺報道に対するガイドライン』を発表しています。日本では厚労省が啓発しているのですが、文芸春秋の報道はこの方針に反するものと言えるでしょう。

画像:自殺報道に対するガイドライン

 「遺族への配慮」を完全に無視して記事にしていますし、文芸春秋が要求する政治方針に『手記』という形で利用しているからです。明らかにセンセーショナルに扱っている訳ですから、問題なのです。

 問題のある報道を行ったメディア機関を “同業者のよしみ” で他社は黙認・容認するのでしょうか。このような姿勢を採ることが既存メディアへの信頼を損ね、ネットなどの媒体が信用を得ることになっていることを自覚する必要があると言えるのではないでしょうか。