読売新聞、「電気・ガスの小売自由化による消費者への恩恵が少ない」と誤った主張を展開する
読売新聞が4月7日付の社説で、「電気・ガスの小売自由化から1年が経過したが、消費者に対する恩恵が少ない」と主張しています。
しかし、これは完全に勘違いをしています。『自由化』とは「すべての顧客に満遍なくサービスを提供しなければならない」という制約から事業者を解放することです。ムダも含まれている公共サービスとは別物であることを認識しなければなりません。
市場の自由化は、幅広い消費者に恩恵をもたらすものでなければならない。業界の枠を超えて、新事業の開拓やサービス拡充に一段と取り組んでもらいたい。
(中略)
物足りないのは、自由化による値下げ効果が都市部に偏っていることだ。需要が大きい首都圏などに殺到し、限られたパイを奪い合うだけでは、新市場創出による長期的な業容拡大は見込めない。
地方にも自由化の恩恵を広げるには、中小の新規参入業者が存在感を高めることが欠かせない。
新規参入が起きれば、競争が発生します。ただ、競争する商品は「電気」であり、「新聞」とは異なるのです。
地方紙は “各地方の細かいニュース” を伝えることで全国紙と差別化を図ることはできますが、電気ではそれは不可能です。そのため、競争が起きる条件が極めて限定されることになります。
『自由化』は事業者に「赤字顧客にサービスを提供しない自由」も与えることを意味する
電気やガスは『独占』の見返りとして「すべての利用者に “均等なサービス” を提供すること」が義務づけられていました。
それが『自由化』により、その義務を負う必要がなくなりました。つまり、事業者が損失を被るような “割に合わない顧客” にまでサービスを提供する責務から解放されることになったのです。
当然、どの事業者も獲得したいのは「利益をもたらしてくれる顧客」です。
電気料金だけでは火力発電用の燃料を大量購入する電力会社と勝負にはなりません。新電力は「本業ビジネスとのセット販売」に重きを置いているのですから、都市部の消費者が恩恵を最も受けやすい立場にあるのです。
読売新聞は『自由化』を主張するほど、放送法4条の撤廃に跳ね返ってくることを理解しているのか
読売新聞の社説に含まれた問題点は「メディアの首を締める恐れのある主張」というものでしょう。
- 電気・ガス
- 自由化による消費者の恩恵が少ない
- 新事業の開拓やサービスの拡充に取り組むべき
- 地方にも恩恵を広げるため、中小の新規参入者が存在感を高めるべき
- テレビ局・電波
- 放送法4条の撤廃には断固反対
- 番組内容の『自由化』によるマイナスが大きい
見事なダブルスタンダードです。「市場を自由化することで消費者が恩恵を得なければならないし、そのために事業者が汗をかけ」と読売新聞は主張しているのです。
そう主張するのであれば、既存テレビ局だけが電波を占有・利用している現状に対しても “同様の主張” を展開しなければなりません。
他業種には事業者に経営努力を要求しておきながら、自分たちの利権を奪うことは許さないとする身勝手な主張は反感を招くことになるでしょう。そのぐらい社説の内容がひどいレベルなのです。
『自由化』が行われたにも関わらず、行政が事業者に対して “口出し” が可能であるなら、それは『自由化』とは言いません。読売新聞は根本的な部分で『自由化』の意味を間違えていると言えるのではないでしょうか。