「海外のサッカー選手や監督は相手チームを褒めることしかしない」という大前提を見落とす日本のマスコミは痛い

 ドイツのバイエルン・ミュンヘンに所属するコロンビア代表のハメス・ロドリゲス選手が「香川や本田のいる日本代表に警戒感を示した」と共同通信が報じています。

 しかし、この発言を真に受けてはなりません。なぜなら、海外のサッカー選手や監督は「相手チームを褒めることしかしない」からです。

 当然、相手の弱点に言及することなどあり得ませんし、格下に見るような発言もしません。このような前提があるという認識を持っていなければ、本番で完膚なきまで叩きのめされることになるでしょう。

 

 サッカーのコロンビア代表MFロドリゲス(バイエルン・ミュンヘン)が8日、ワールドカップ(W杯)ロシア大会1次リーグH組初戦で対戦する日本について「優れた選手が多く、質が高い。ドルトムントでプレーしている香川もいるし、本田もいる」と警戒した。

 もし、ハメス・ロドリゲス選手の発言を鵜呑みにし、「香川や本田をW杯のメンバーに入れるべき」と主張するマスコミがあるなら、致命的と言えるでしょう。

 2014年のブラジルW杯では香川選手や本田選手を擁した日本代表をコロンビア代表は難なく下しているのです。主力選手のレベルが当時から上乗せされていない状況なのですから、煽てられているという現実に目を向ける必要があるのです。

 

メディアの前で選手批判や監督批判はタブー

 サッカーだけに限った話ではありませんが、マスコミの前で監督や選手が誰かを批判することはタブーです。この前提を知らないと、本音を引き出すことはできなくなってしまうのです。

  • 日本のサッカー界
    • 監督と選手の関係は「指導者と教え子」
      → メディアの前での選手批判はOK
    • マスコミは批判的な記事を書かない
  • 海外のサッカー界
    • 監督と選手の関係は対等な立場
      → メディアの前での批判は論外
    • 批判は1対1で直接行う
      (※ 公衆の面前ではパワハラに該当するため)
    • 記者や解説者が監督・選手・チームへの批判を行う

 「メディアを使って相手を陥れるような発言はハラスメント(=嫌がらせ)に該当する」という認識が存在するため、監督や選手が「批判」と見なされる発言をすることはありません。

 また、対戦相手を刺激する(= やる気を出させる)ような発言をして、自分の首を絞めるような真似は自重することでしょう。社交辞令を述べていることと同じですから、差し引く必要があるのです。

 

“当たり障りのない褒め言葉” に一喜一憂すべきではない

 ハメス・ロドリゲス選手のコメントは「(実力差を過信するとコロンビアが痛い目に遭うだけの)クオリティーを持った選手が日本にはいる。気をつけないといけない」というものでしょう。

 『自分たちのサッカー』を貫いた日本代表は2014年のブラジルW杯でコロンビア代表に完膚なきまでに叩きのめされたのです。「格下のチーム」と自認し、全選手がハードワークを惜しみなく敢行すれば、勝点を手にする確率はあったと思われます。

 ただ、ハリルホジッチ監督を解任し、その方向性から決別しています。そのため、結果を手にすることは難しいと言えるでしょう。

 「ドルトムントでプレーしている香川」と「ドルトムントの攻撃を牽引している香川」では大きな違いあります。極端な話、干されている選手でも “プレーしている” と評することは可能です。したがって、単なる褒め言葉に一喜一憂することは避けなければならないのです。

 

シビアな分析は「メディアと解説者」の責務

 マスコミは孫子の『彼を知り己を知れば百戦殆うからず』を思い出す必要があります。

 監督や選手は基本的に “優等生発言” に終始するのです。それを鵜呑みにしてしまうと、正しい分析はできなくなります。

 求められているのは「シビアな分析」であり、メディアや(お抱えの)解説者がピッチ上で選手が見せるプレーからチームの方向性に目星を付け、記者会見で “狙い” などを質問するという「地道な作業の積み重ね」が重要になるのです。

 サッカーはチームスポーツですから、重要なのは「チームとしてどう機能しているか」です。「知名度のある選手のプレー内容」は二の次であることを忘れてはなりません。

 日本のマスコミが “伏兵” と見ていた選手が、実は「 “お決まりのパターン” で得点を決めただけ」というパターンは起こり得ることなのです。

 

 サッカー日本代表戦の中継は「飲み屋のおっさん連中が観戦している所にマイクを置いただけ」という状態とほぼ同じですから、相手の主力選手が名前を出してくれたというだけで感謝感激なのでしょう。

 マスコミが成長しない限り、選手たちの増長が止まることはないと言えるのではないでしょうか。