日大・第三者委員会、委員長自ら「怪我を軽くするためのタックルでは」との詭弁を述べて火に油を注ぐ

 日本大学アメフト部による悪質タックル問題の件で設立された第三者委員会が怪我をした選手のいる関西学院に対するヒアリングを行ったとのことですが、その席上で調査委員長が火に油を注ぐような発言をしたことが明らかになりました。

 ヒアリングで「怪我を軽くするためのタックルでは」などと自ら主観を述べることは論外ですし、“専門性” を持たない素人集団こそ、依頼主の意向に流されやすいリスクが高いと言えるでしょう。

 

奥野康俊氏がヒアリングの実態を告発

 日大アメフト部の守備選手による悪質タックルで負傷した関学 QB の父親である奥野康俊氏が自身のフェイスブックやツイッターで日大の第三者委員会からのヒアリング時に発生した不愉快発言を告発しています。

画像:奥野康俊氏によるツイート

 第三者委員会で委員長を務める勝丸充啓弁護士から「あのタックルは怪我を軽くするためのタックルだったのでは」との説明があったとのこと。

 この発言は明らかに火に油を注ぐものです。「(ヒットされた腰部を保護する)ブロッキングパッドを着用した部位を狙ったものだから、問題ないプレー」とでも言いたいのでしょうか。

 ヒット(= タックル)を敢行したこと自体が問題なのです。明らかに専門性が欠如した人物が調査・ヒアリングを行っている弊害が出ていると言えるでしょう。

 

日大の第三者委員会は「アメフトに対する専門性」を持ち合わせているのか

 日弁連は『不祥事における第三者委員会ガイドライン』(PDF)を掲載しています。その中で「委員等についての指針」として、以下の文言が記載されています。

画像:第三者委員会のガイドライン(日弁連)

 肝は「有識者と協力して、多様な視点で調査を行う」というものです。ところが、日大の第三者委員会には “有識者” が含まれている様子が見えないのです。

 委員長を務める勝丸弁護士がアメフト知識に精通している必要はありません。なぜなら、アメフトに精通した人物を有識者として「調査委員会の委員」または「調査担当弁護士」という形で起用し、調査・事実認定をすれば良いからです。

 しかし、ヒアリングを行った勝丸弁護士(および同席した弁護士)は「アメフト知識ゼロ」を露呈し、火に油を注いだ訳ですから、日大側の対応はことごとく裏目に出ていると言えるでしょう。

 

「先入観を持たないために下調べをしない」と宣言する記者と変わらない

 一部の記者は「先入観を持たないために下調べをしない」と宣言し、取材相手に勉強不足による無知をさらけ出すことがあります。日大の第三者委員会もこれと同じ行為をしていると言えるでしょう。

 まず、悪質タックルを行った日大の選手が「ホイッスルは聞こえていた」と記者会見で回答した意味を第三者委員会は正しく理解しなければなりません。

 (悪質タックルを行った)選手が「プレーが終わっていることを認識していた」と認めており、「怪我を軽くするためのタックルだった」との理由で擁護することは不可能です。

 プレー中での出来事なら、そのような理由での釈明は可能です。しかし、「プレーが終わった」との認識がある中で、悪質タックルを敢行している訳ですから、「怪我を軽くするため」という弁解は成り立つことはありません。なぜなら、タックルをしてはならない状況だったからです。

 「ボクシングでラウンド終了を告げるゴングが鳴った後に、背を向けた相手を殴る」と同じ行為なのです。それを「あのパンチは怪我を軽くするためのものでは」と第三者委員会(や規律委員会)がヒアリングで発言すれば、どうなるかを想像する必要があります。

 

 第三者委員会が設立したニュースを取り上げた際、「中立性や公平性だけでなく、専門性も重要」と指摘しました。

 「指示を間違った理解しただけ」などと述べる “アメフト素人の委員” の主張に引っ張られる懸念を示唆しましたが、第三者委員会全体が “素人感覚” で「怪我を軽くするためのタックル」などと発言するようでは逆効果と言えるでしょう。

 日大側に向けられている怒りの矛先を変えられるなら、炎上させることも手段の1つです。ただ、批判や怒りを増幅させる行為・発言は自重しなければなりません。

 このままでは朝日新聞の第三者委員会と同様に「依頼主の要望に忖度した調査報告書」が発表される可能性が極めて高いと言えるのではないでしょうか。