アメリカから「余剰プルトニウム削減」の要求、反原発派は「原発用のMOX燃料として消費する」以外の選択肢を示せ

 日経新聞によりますと、アメリカが「余剰プルトニウムの削減」を要求しているとのことです。

 これは7月に期限切れを迎える『日米原子力協定』の自動延長を行うことに対する、注文と言えるでしょう。大騒ぎする必要のないニュースですが、「余剰プルトニウムの使用方法が失われている状況」は問題です。

 特に、反原発派は実行可能で現実的な選択肢を示す必要があるのです。

 

 米国が日本で余るプルトニウムについて核不拡散の観点から削減を要求していることを受け、日本政府は米国の理解が得られるよう対応と説明に全力を尽くす方針だ。ただ今回の要請内容は従来に比べてより具体的。政府内には米側の要求水準を満たせなければ、日本の国策である核燃料サイクル事業が揺らぎかねないとの懸念がある。

 日本のプルトニウム保有量が “高止まり” となっている理由は「核燃料サイクルが止まっているから」です。サイクルを止めるよう反原発派が活動を行い、その弊害が生じ始めている訳ですから、問題の具体的な解決策を提示することは反原発派の責務と言えるでしょう。

 原子力発電所の運転を止めれば、原発関連の全問題が解決されるという訳ではないのです。

 

『核燃料サイクル』と『日米原子力協定』の関係

 まず、『核燃料サイクル』が始まった理由は「ウラン資源の枯渇が懸念されていたから」です。そのため、MOX 燃料を製造し、原発で使用するサイクルの構築が行われたのです。

画像:MOX燃料生成における核燃料サイクル

 このサイクルを確立させるには『日米原子力協定』が不可欠です。なぜなら、原発で一般的に使用されているウラン燃料が発電を終え、使用済ウラン燃料となった状態から再処理を施すことでプルトニウムが得られるからです。

 つまり、核兵器の原料を手にすることができるのです。「プルトニウムを核の材料に使うのではなく、平和利用のために使っている」ことを証明するための役割を『日米原子力協定』は担っていると言えるでしょう。

 この協定は極めて特殊で例外的であることを見落とすべきではありません。

 

原発を止めると、「使用済み核燃料だけが溜まり続ける」という問題が生じる

 反原発派は「原発はトイレのないマンション」と批判を展開しています。しかし、この主張は誤りです。

 実際は「配管・配水・便器設置は完了済みで水を流せば問題は解決されるが、『トイレの使用が環境に与える影響を考えろ』と叫ぶ人がいて、トイレの水を流すという行為に踏み切れない」という状況です。

 トイレ排水は下水道を通り、下水処理場での処置が施されます。汚泥除去が済んだ水は河川に排出される訳であり、原発も同様のプロセスが用意されています。ところが、反原発派はそのプロセスを使うことを妨害する運動を展開しているのです。

 トイレ(= 原発)の使用を止めると、排泄物(= 使用済み燃料)が溜まり続けることになります。これができてない反原発派は問題を理解できていない可能性があると言えるでしょう。

 

原発停止でプルトニウムが余る理由

 野党は「原発ゼロ」を主張していますが、原発の運転をゼロにしたところで、すでに「使用済みウラン燃料」となっている “核のゴミ” が消えてなくなることはありません。この視点が野党や反原発派から完全に欠落しているのです。

 余剰プルトニウムを消費する最も現実的な手法は「MOX 燃料として原子力発電所で使用する」というものです。

画像:MOX燃料の素材比率

 原発が再稼働すれば、MOX 燃料を使う発電所でプルトニウムは消費されます。しかし、この解決策に野党や反原発派は「待った」を現にかけている訳ですから、プルトニウムは余ったままになってしまいます。それを防ぐための具体的な代替案を示す責務があると言えるでしょう。

 ちなみに、再処理を実施すれば、以下のメリットも得られるのです。

画像:MOX燃料を使った『核燃料サイクル』のメリット

 そのための費用も必要になりますが、核燃料サイクルの費用は 1.5円/kWh と火力燃料の10分の1程度。FIT による高額な買取価格と比べれば、微々たる額なのです。

 

 プルサーマル計画として、電気事業連合会が資料(PDF)を公開しています。野党が唱える「反原発や原発ゼロ」を実施しても、『余剰プルトニウム問題』や『核のゴミ処理問題』は解決されず、先延ばしされるだけです。

 『余剰プルトニウム問題』や『核のゴミ処理問題』は放置したままになる訳ですから、問題は後々になって国民が過剰な負担を強いられる形で降り注ぐことになるでしょう。

 「原発用のMOX燃料としてプルトニウムを消費する」という現実的な選択肢に NO を主張するのであれば、それに代わるだけの価値があると見なされる『経済性のある具体的な選択肢』を提示することが野党や反原発派の責務と言えるのではないでしょうか。