税収がバブル期以来の高い水準となるも、社会保障費の支出がバブル期の3倍では財政再建など不可能だ
NHK によりますと、昨年度(平成29年/2017年)の税収がバブル期の平成3年度(=1991年度)以来となる高水準を記録したとのことです。
所得税収が大きく伸びたことは経済政策がそれだけ寄与したと言うことでしょう。ただ、社会保障費が当時の約3倍になっているため、“成長の実感” が乏しい状況となっているのです。
この点を指摘しないマスコミに「財政再建や歳出拡大」を要求する資格はないと言えるでしょう。
昨年度の国の税収は、所得税収が大きく伸びたことなどから、当初の見積もりを1兆円以上、上回り、58兆円台後半となることがわかりました。バブル期の平成3年度以来、26年ぶりの高い水準となる見通しです。
(中略)
税収が大きく伸びる見通しになったことで、今後、歳出拡大を求める声が高まる可能性もあり、政府は厳しい財政状況を立て直すため財政規律をどう維持していくか、難しい対応を迫られることになりそうです。
「難しい対応」というのは年金受給世代など、高齢者に “配慮” した内容です。なぜなら、社会保障費として十分すぎるほどに高齢者は優遇されているからです。
バブル期に比べ、社会保障費の支出は3倍になった
マスコミは「社会保障費の増大」をニュースで取り上げることはほとんどないでしょう。なぜなら、お得意様である高齢者を気分を害するような報道をする勇気がないと思われるからです。
平成3年度 | 平成29年度 | |
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税収 | 59兆8000億円 | 58兆円台後半 |
歳出 (社会保障) |
70兆5000億円 (約12兆円) |
99兆1000億円 (32兆4735億円) |
NHK は「昨年度(平成29年/2017年)の税収がバブル期の平成3年度(=1991年度)以来となる高水準になる見通しとなった」と報じていますが、目を向けるべきは「歳出」の項目です。
中でも、社会保障費は当時に比べて20兆円以上も増加しているのです。バブル期よりも歳出額が多い状況で、さらなる歳出拡大を要求することは財政危機を招く行為であると言えるでしょう。
社会保障費の増大に対し、「国債発行による補填による対処」が常態化していたことが問題
日本の一般会計税収と歳出総額の関係(PDF)は以下のとおりです。
バブル崩壊後、国の税収は落ち込みました。「失われた20年」などと称されているのですから、当然でしょう。
その反面、歳出(=国の予算)は切り詰められることなく、伸び続けました。これでは「累積赤字」が発生して当然です。しかも、支出の大きな原因になることが明らかであった「社会保障費の増大」に取り組まなかったのですから、その責任は避けられないことなのです。
社会保障費は既に20兆円増加し、今後も増加し続ける
「社会保障費が増大し、予算を圧迫している」というデータは日経新聞も公開しています。
バブル期よりも、国が支出する社会保障費は20兆円も増加しているのです。今後は “団塊の世代” が高齢者となり、年金・医療費を使う側になるため、社会保障費の歳出はさらに増加することでしょう。
つまり、「社会保障費の歳出抑制」をしなければ、財政再建など不可能なのです。しかし、『後期高齢者医療制度』で高齢者の窓口負担が軽く設定されていることが代表的なように、現役世代に負担がすべて押し付けられている状況なのです。
この事実をマスコミは視聴者や読者に繰り返し、何度も伝える必要があると言えるでしょう。
「将来世代のために、財政再建は必要」と主張するなら、その原因も合わせて指摘しなければなりません。「社会保障費がバブル期水準(約12兆円)の3倍にもなっていることはおかしい」と指摘できないのであれば、『財政再建』をテーマとして扱う資格がないも同然です。
テレビや新聞という既存メディアで、視聴者・読者に “厳しい現実” を突きつけることがマスコミとしての大きな役割と言えるのではないでしょうか。