OPEC が増産を正式発表も、市場の原油価格は上昇する

 6月22日に OPEC (石油輸出国機構)が原油の増産で合意したものの、同日のニューヨーク原油先物市場は価格が上昇したと読売新聞が伝えています。

 「増産されれば、価格は下がる」ことが一般的でしたが、逆の動きとなっています。エネルギー資源の多くを原油に依存している日本にとっては歓迎できない動きと言えるでしょう。

 

 22日のニューヨーク原油先物市場は、石油輸出国機構(OPEC)が合意した増産の実効性を疑問視し、急伸した。代表的な指標となるテキサス産軽質油(WTI)の8月渡し価格は、前日比3・04ドル高の1バレル=68・58ドルで取引を終了した。終値として、5月下旬以来、約1か月ぶりの高値をつけた。

 資源国ではない日本にとって、原油価格の上昇は歓迎できるものではありません。なぜなら、購入コストが上昇することを意味し、生活にマイナスの影響を及ぼすからです。

 本来、OPEC で「増産」が決定すれば、市場に原油が多く出回るため、「価格は下落」します。しかし、それとは逆の動きが先物市場で示されたことは注意する必要があると言えるでしょう。

 

価格上昇の理由は「具体性の欠如」

 原油価格の指標となるのはテキサス産軽質油(WTI)と呼ばれる価格です。トランプ政権の「イランへの制裁強化」を受け、1ヶ月前に価格が上昇し、直近では元の価格に近づく動きを見せていました。

画像:WTIの価格推移(読売新聞より)

 OPEC が「増産」を発表したのですから、「1バレル=60ドル台前半」にまで価格は押し下げられる期待があったと思われます。

 しかし、増産の具体的な規模や方法が明言されず、不透明感が広がることになっていたのです。「日量で100万バレルの増産」に合意したものの、一部から「実際には70万バレル程度になりそう」との声が出れば、(増産の)効果は少ないとの見方が市場で現れることは当然の成り行きと言えるでしょう。

 

原油が高値水準にあることは日本経済や産業界にとって大きなマイナス

 経済活動を行うには「エネルギー資源」が不可欠です。日本では原油由来の資源(石油や天然ガス)に大きく依存しており、その価格が高値になることで生じる影響は軽視できるものではありません。

 そのため、多様なエネルギー資源を確保することによる「リスクの分散化」が進められているのです。

 しかし、反原発派などは真逆の動きを見せ、マスコミもその姿勢を応援する有様です。「日本はエネルギー資源の国内調達率は3割にも満たない」のですから、原油資源に依存している状況を踏まえた上でのエネルギー政策を提起すべきでしょう。

 「天然資源がない上、人件費などの製造コストが高い国」に企業が生産拠点を置き続ける見返りが少ないことを自覚しなければなりません。

 

 日本が “蚊帳の外” に置かれているのは「原油価格」のようなエネルギー資源においてのことなのです。『購買力』という形で影響を与えるにしても、現実的な代替エネルギー資源を確保できていなえれば、話にもなりません。

 マスコミは『北朝鮮問題』だけでなく、『エネルギー資源問題』にも同様の視点から問題点を提起し、「日本経済を安定・成長させる政策」を政治に要望すべきと言えるのではないでしょうか。