「最低賃金の引き上げ」を訴える藤田孝典氏、『ブラック企業の保護促進』を主張して矛盾を指摘される

 『反貧困』が左派のトレンドの1つとなっていますが、その中で聖学院大学で准教授を務める藤田孝典氏が貧困を助長するツイートをしてしまっています。

 本人はそのことを認識している自覚は持っていないと判断せざるを得ないため、致命的と言わざるを得ないでしょう。ただ、藤田氏の “立ち位置” としてはブラック企業が跋扈する社会は「正しい」と言えるはずです。

 

藤田孝典氏のツイート内容

 問題があるツイートは以下のものです。

画像:藤田孝典氏のツイート

 これは藤田孝典氏が ZOZOTOWN を運営するスタートトゥデイの田端信太郎氏と「最低賃金」を巡る議論をしていた際にツイートされたものです。

 どこが問題かと言いますと、「賃金を払えない、または払う余裕がない企業には賃上げを要求しない」と述べている点です。これは「払えないものは仕方ない」と思ってしまう人がいると思いますが、大きな間違いです。

 なぜなら、最低賃金は「絶対に払わなければならない賃金」を定めたものだからです。これを無視する企業を “目こぼし” するのですから、『弱者の味方』とは到底言えない行為なのです。

 

米村歩氏の “ツッコミ” がすべてを物語っている

 藤田氏のツイートに含まれている問題は「日本一残業が少ない IT 企業」を経営している米村歩氏がツイートで指摘をしています。

画像:米村歩氏のツイート

 藤田氏の主張内容に沿うと、経営資金に余裕のある企業は賃上げを強いられます。その一方で、「賃金を払えない企業」や「払う余裕のない企業」は現状維持が許されることになります。

 これは問題と言えるでしょう。

 なぜなら、「『賃金を払えない、払う余裕のない企業』が市場で淘汰されない」という事態が起きるからです。“こうした問題を持つ企業” は市場で淘汰されるべきですが、問題が黙認されれば、生き残ってしまいます。

 従業員に正当な対価を支払わない企業は “ブラック企業” と言えるでしょう。『反貧困』を掲げる界隈で “ブラック企業” の経営姿勢を擁護することは大きな問題と言えるはずです。

 

ブラック企業が市場の競争原理で淘汰されると、藤田氏の “収入源” が1つ潰えるという現実

 ただ、藤田氏の立場を確認すると、上述の主張を展開する理由も理解できなくはありません。なぜなら、「ブラック企業対策プロジェクト共同代表」という肩書きを有しているからです。

 ブラック企業が存在しているから、『対策プロジェクト』が成り立つのです。米村氏が主張するように「市場(の競争原理)でブラック企業が淘汰される仕組み」が構築されてしまうと、『対策プロジェクト』は用済みになることは明らかです。

 「個別のブラック企業ごとの対策プロジェクト」より、「定められた最低賃金すら払えない企業は市場から退場」とした方が “問題のあるブラック企業” を効率的に淘汰できます。

  また、賃金水準を不当に低く引き下げていた業者が消えれば、平均賃金が上がるのですから、同業他社の従業員にも波及効果が期待できることでしょう。こうした視点が左派の主流的な考えにならなければ、リベラルに支持は集まりにくいと考えられます。

 

 「資金的に余裕があるなら賃上げしろ」という主張は「資金的に余裕がないから、賃下げを行う」という主張に正当性を与えてしまいます。

 つまり、労組が春闘などで掲げる『前者の主張』によって、『後者の主張』に近い賃金体系を採用するブラック企業が生存することになっているのです。

 「企業は労働力に見合った正当な対価を支払え」と要求することが大前提であり、会社の業績が好調な時だけ『業績連動型の賃上げ・賞与』を要求するから、組合運動に継続性が生まれないのです。

 運動方針そのものが時代遅れになりかけていますので、活動家自身も方向性を見直す必要があると言えるのではないでしょうか。