韓国のチョ・グク法相が電撃辞任、疑惑に塗れた人物を大臣に抜擢したムン・ジェイン大統領にとって逆風が強まる結果となる
NHK によりますと、韓国のチョ・グク法相が辞任を発表したとのことです。
ムン・ジェイン大統領は自身や家族に様々な疑惑が噴出している状況にあったチョ・グク氏を法相に強行任命しました。その法相が1ヶ月あまりで辞任する事態となったのですから、政権運営に対する逆風は避けられないと言えるでしょう。
チョ・グク法相は14日午後、声明を発表し、14日付けで法相を辞任すると発表しました。
声明でチョ法相は「これ以上、私の家族のことで大統領や政府に対し迷惑をかけてはならない」としたうえで、力を入れてきた検察改革については、後任に委ねる考えを示しました。
(中略)
側近のチョ法相が1か月余りで辞任することについて、ムン大統領は「国民の間に対立を生み出してしまい、社会は大きな痛みを経験した。大統領として、非常に申し訳なく思う」と述べ、国民に謝罪しました。
辞任の決定打は「法務部・国政監査」を翌日に控えていたからだろう
チョ・グク法相が辞任を決断した要因は中央日報が15日付の社説で報じている「国政監査」でしょう。
チョ・グク法務部長官が昨日電撃辞任した。長官に任命されてから35日目のことで、法務部国政監査を翌日に控えた時点だった。
韓国では「国政監査」が国会主導で行われます。国会の場で偽証をすると罪に問われるため、野党議員が手ぐすねを引いて待ち構えていたことでしょう。
検察が押収した証拠を野党議員に横流しする可能性があり、それをネタに糾弾されると耐え切れないと判断したのでしょう。だから、厳しい批判を受ける前に辞任を決断したものと考えられます。
就任前の時点で様々な疑惑が噴出していた人物を閣僚に任命した(ムン・ジェイン大統領の)責任は重い
法務部国政監査では「法相であるチョ・グク氏が国会での追求を受ける」ことが予定されていました。疑惑を抱えた状態で法相に就任すれば、国政監査が行われることは十分に想定できたはずです。
つまり、ムン・ジェイン大統領は「チョ・グク氏が国政監査に(召喚されたとしても)耐えられるはず」との考えがあったから、法相に任命したのでしょう。
しかし、結果はその前にチョ・グク氏が辞任を申し出ることになりました。「閣僚就任後に発覚したスキャンダル」ではなく、「閣僚任命前の時点で問題視されていたスキャンダル」が致命傷になったのですから、任命責任が問われることを避けるのは困難です。
したがって、チョ・グク法相が辞任した後の政権支持率や政党支持率が韓国内でどのように変化するかが大きな注目点だと言えるでしょう。
「デモに参加した人数」を競い合う様相が再び強くなりつつある韓国
韓国も代議制の民主主義ですが、“皇帝のような権力を持つ” 大統領が直接選挙で選出されるため、国内世論の動向に(日本よりも)ナーバスという特徴があります。
そのため、自陣営が優勢であるとの印象を世間にアピールするために左右の両陣営ともが「動員」をかけて規模を大きく見せようとします。
野党(= ムン・ジェイン政権を批判する保守系)は批判を強めるでしょうし、保守派を支持する側はデモ活動の動員数を前面に打ち出すことで「民意がこちらにある」と示そうとするはずです。おそらく、ムン・ジェイン政権を批判するための “新たなネタ” を探していることでしょう。
韓国では2020年4月に議会総選挙が行われるため、与野党ともに「チョ・グク法相の辞任」を最大限活用しようとするはずです。日本に直接的な影響が今年中に出る可能性は低いと考えられますが、来年以降なら、あり得ることです。
したがって、韓国政府の立ち位置が変化する可能性も考慮に入れた上での対応を準備しておくことも現状の方向性を維持することと同様に日本政府にとっては重要と言えるのではないでしょうか。