池上彰氏、テレビ朝日の番組で「ムン・ジェイン大統領は国内の司法判決に従わざるを得ない」と事実を無視した擁護論を展開する

 2月9日にテレビ朝日系列で放送された『池上彰のニュースそうだったのか!!』で、司会の池上彰氏が徴用工問題における韓国側の立場を代弁する主張を行っています。

 番組内での発言で問題なのは「事実関係を意図的に隠蔽していること」でしょう。これにより、視聴者に「韓国側の主張も理解できるもの」との誤解を植え付けることになる番組構成になっているからです。

 

■ 池上彰氏の番組内での発言

 9日にテレビ朝日系列で報道された番組では「韓国との外交問題」にスポットが当てられました。両国が揉めている問題の1つが『徴用工問題』なのですが、池上氏は次のように “解説” したのです。

画像:池上氏の番組での発言内容
  1. 韓国は三権分立であり、行政のトップ(= 大統領)であっても司法の判断に従わざるを得ない
  2. ムン・ジェイン大統領は「問題は解決済み」とする日本と「未解決」とする韓国の国内世論との間で板挟み状態
  3. 判決は大法院(= 日本の最高裁に相当)のスタンドプレー

 要するに、「韓国・大法院の “スタンドプレー” により、ムン・ジェイン大統領は板挟みになっている」と主張しているのです。こうした主張をすることで、「韓国側の事情に配慮しても良いのではないか」との空気を日本国内に作り出したいのでしょう。

 しかし、徴用工問題の大法院判決はムン・ジェイン政権が “出させた” ものなのです。大法院が(暴走する形で)自発的に “出した” ものではないため、池上氏の解説はデマと言わざるを得ない内容となっています。

 

■ 事実

1:判決を出した大法院の長官はムン・ジェイン政権が “大抜擢” した人物

 まず、韓国・大法院の現長官であるキム・ミョンス(金命洙)氏は2017年の8月にムン・ジェイン大統領から指名されました。ただ、これが異例の “大抜擢” であると KBS が報じているのです。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、21日、日本の最高裁判所長官にあたる大法院長の候補に金命洙(キム・ミョンス)春川地方裁判所長(57)を指名しました。大法院長の任期は6年で、各級裁判所の指揮・監督権や裁判官の任命権を持ちます。

 (中略)

 大法院の裁判官である大法官の経験のない人が大法院長の候補に指名されるのは、1961年以来56年ぶりです。

 日本で例えると、最高裁の新しい長官に地裁の所長が指名されたのです。「最高裁の裁判官」や「高裁の所長」をごぼう抜きする形で指名されて就任したのですから、『三権分立』など建前に過ぎないと言わざるを得ません。

 したがって、「裁判所の出した判決にムン大統領が従わざるを得ない」というのは日本向けの “言い訳” であり、徴用工問題で原告勝訴の判決を出させたのはムン・ジェイン大統領の行動によるものなのです。この “茶番” に日本側が付き合う意味はないと言えるでしょう。

 

2:「徴用工問題の判決を遅らせた」との理由で大法院の前長官が逮捕されている

 また、ムン・ジェイン政権は「徴用工問題の判決を遅らせた」との理由で大法院のヤン・スンテ(梁承泰)前長官を逮捕しています。

 韓国検察は24日、韓国大法院(最高裁)が、朴槿恵(パククネ)前政権の意向を受けて元徴用工らの民事訴訟の進行を遅らせたとされる事件で、梁承泰(ヤンスンテ)・前大法院長(最高裁長官)(70)を職権乱用などの疑いで逮捕した。梁容疑者は容疑を否認しているとみられる。

 このニュースは今年の1月24日に朝日新聞が報じたものです。三権分立が機能しているなら、司法の対応に行政が “報復” 措置に出ることは不可能でしょう。

 しかし、実際には自らの政治的価値観に合わない司法の人間が次々に失脚させられているのです。この事実を伝えず、「司法の判断に従わなければならない」と主張するのは詭弁と言わざるを得ません。

 大統領(やその支持者など)の顔色を見て下された韓国国内の判決を日本側が配慮すべきであるとの論調は両国関係を悪化させる原因になるのは当然の結果だと言えるでしょう。

 

3:韓国政府が日韓基本条約に基づいて韓国国民に補償すれば解決する『韓国の国内問題』に過ぎない

 『徴用工問題』ですが、これは日韓基本条約に基づき韓国政府が韓国国民に補償すれば解決する問題です。ただ、支払い当事者である韓国政府が自らの責任を日本に転嫁しようとし、それが両国関係を悪化させることになったのです。

 両国間の基本関係を作るための『条約』を片方の国が一方的に無視すれば、関係は悪化するのが当然です。

 日本はこれまで「韓国のワガママ」に対し、“大人の対応” で甘やかして来ました。韓国を子供扱いすることで自尊心が満たされたリベラル派もいたことでしょう。しかし、一方的な要求がエスカレートし続けたことで遂にバランスが崩れてしまったのです。

 フラットな二国間関係になれば、両国関係は「良くもなく悪くもない関係」に落ち着くことでしょう。しかし、韓国側が「対等な関係」ではなく「(道徳的な面などを理由に)韓国が絶対的に上の関係」を要求しているのです。

 これでは「(距離的に)近くて(価値観的に)遠い国」になるのは避けようがありません。池上氏や朝日新聞が主張する韓国擁護は都合の悪い情報が抜け落ちているため、ネットが一般化した現代社会では逆効果です。

 騙せるのは “情弱” に限定されるでしょう。BPO も事実誤認を引き起こすような問題ある内容が含まれた番組に対して積極的に調査を行う必要があると言えるのではないでしょうか。