日本政府のクルーズ船への対応を批判した記者の母国イタリアでの新型コロナウイルスによる死者数が3月2日時点で50人を超える

 2月3日に横浜港に寄港したクルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス』でも発生した新型コロナウイルスへの日本政府による対応について、イタリア人記者が「対応が遅い」と批判していました。

画像:日本政府の対応を批判したイタリア人記者だったが…

 ただ、その記者の母国イタリアが新型コロナウイルスによって死者が52人も発生しているのは皮肉としか言わざるを得ないでしょう。(医療崩壊が起きている)韓国での死者数を上回っているのですから、事態は相当深刻です。

 

上から目線での講釈を垂れたのはピオ・デミリア(Pio d'Milia)氏

 NHK のニュースウォッチ9に登場して「日本政府は(ダイヤモンド・プリンセスへの)対応が遅い」と語ったのはイタリア人のピオ・デミリア氏でしょう。

 デミリア氏の政治的な立ち位置は左翼で、菅直人氏(立憲民主党)などと近い関係にあります。また、反原発や自由報道協会の活動にも深く関わっている人物です。

 「対応が遅い」と批判したところで、ダイヤモンド・プリンセスはイギリス船籍です。クルーズ船から見て外国に当たる日本の法律は適用されないのですから、行政が介入できることには限界があるのです。

 この事実を無視した理想論に基づく批判には何の意味もないと言えるでしょう。

 

デミリア氏の母国イタリアで新型コロナウイルスによるパンデミックが発生

 上から目線で講釈を垂れたデミリア氏の母国イタリアが「素早い対応で新型インフルエンザを封じ込めたのか」と言いますと、答えは「NO」です。素早い動きは見せたものの、効果は全く得られませんでした。

画像:新型コロナによるイタリア国内での死者数

 デミリア氏が NHK で『日本政府の対応』を批判した際、イタリアでの感染者はほとんど確認されていません。

 ところが、イタリア北部で “最初の患者” が2月21日(金)に発見されると、週末で事態が一変してしまいます。イタリア国内では「24日(月)の時点で死者6名・重症者27名」となり、この時点で『ダイヤモンド・プリンセス』での死者・重症者数を超えてしまったのです。

 「(当局の)反応が遅い」なら、「何も対策をしていない」ことと同じです。しかし、イタリア国内では “日本在住のイタリア人記者” が「無策」と扱き下ろした『クルーズ船』よりも感染による被害が甚大となっているのです。

 (クルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス』に対して実施した)より効果的な対応策が存在した可能性はありますが、他国の状況を踏まえると日本の厚労省などの対処は合格点には十分に達していると言えるでしょう。

 

3月2日時点での死者数は52人とイタリアは韓国以上に医療崩壊が起きている可能性が大

 ちなみに、イタリアの保健衛生省が発表した最新情報では死者52名・重症者166名3月2日18時)となっています。

画像:イタリア北部に位置する主張な州での新型コロナ患者数

 地域別で見ますと、ミラノのあるロンバルディア州が1254名で抜きん出ています。続くのはボローニャなどがあるエミリア=ロマーニャ州が335名、ベネチアがあるベネト州が273名で3番手です。

 これらの3州は2月最終週での患者の増加数が他地域よりも多く、封鎖措置が続くのは止むを得ないことでしょう。

 ただ、死者数は医療崩壊が起きているテグ(大邱)がある韓国(= 28名・3月2日時点)の2倍弱ですから、「医療崩壊」か「院内感染」のどちらかが極めて深刻な状況にあると考えられます。

 

 「クルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス』への対応が遅い」と日本政府を批判したイタリア人のピオ・デミリア氏ですが、母国イタリアは「効果的な対応策を打てなかったこと」が死者および重症者数という数値データで示される結果となりました。

 ジャーナリストとしての能力があるなら、「『ダイヤモンド・プリンセス』と『イタリア北部』の感染拡大に違いを与えた要素」についての調査報道を行うべきでしょう。

 イタリア国内で “本業” ができずに日本に流れ着いただけの活動家にジャーナリズムに基づく報道を期待するのは非常に酷なことです。「速やかに対応すること」より「有効な対策を講じること」が重要であるという本質的な部分を見落とすと痛い目を見ることなると言えるのではないでしょうか。