新型コロナの死者数に厚労省と東京都で2倍も差があるのは「縦割り行政の弊害」、『共通データベース』の導入で情報伝達を改善すべき
矢崎裕一氏が Yahoo! に「新型コロナウイルスによる死者数が厚労省発表値と東京都発表値が2倍も異なる」と苦言を呈する記事を掲載しています。
おそらく原因は各機関が独自に集計を発表する「縦割り行政」の弊害でしょう。正確なデータが得られないと、データを基に立案する計画が的外れなものになるという問題が発生します。
そのため、関係当局の『共通データベース』を導入するなど、現状の情報伝達体制を改善する必要性が高いと言えるでしょう。
「ウチのやり方に合わせたデータを現場が送ってこい」という姿勢が問題の根幹
厚労省と東京都の公式発表値に2倍も差が生じている理由は「現場が多忙すぎて報告する余裕がないから」でしょう。これは医師の坂本史衣氏がツイートしている状況からも伺い知ることができます。
COVIDの診療をしている病院は、保健所、都道府県、厚労省、文科省といった様々な行政機関やその中の部門から相談件数、受診者数、検査件数、結果等々を毎日報告するよう指示されるのですが、重複する情報をあちこちに送るのは大変なのでデータベースを統合してほしい。。。
— Fumie Sakamoto,MPH,CIC 坂本史衣 (@SakamotoFumie) 2020年4月1日
要するに、関係機関がそれぞれ独自の集計・データ管理体制を構築しており、現場に「自分たちが現在使用しているフォーマットに整理したデータを入力して日々送信せよ」と命令しているのです。
頻度が少なければ、その体制でも十分に対応可能でしょう。しかし、事例や報告対象が増えるとすぐに限界を迎えます。新型コロナウイルスでは現場が “パンク” しており、「行政への報告」でも医療資源が消耗する結果を招いています。
「報告」は必要ですから、関係機関それぞれに報告する現状は改善の余地があります。現在の新型コロナ騒動が少し落ち着けば、即座に改善策の立案・実行をすべきと言えるでしょう。
病院や保健所が「データ入力」を行い、行政は「制限されたデータ閲覧」をする形が望ましい
現状の情報伝達で問題なのは縦割り行政の影響で “関係各所すべて” に現場が個別に報告していることです。これを「報告は一括で行う」と運用を改めることで(現場の)作業量は激減する訳ですから、『共通データベース』のようなものを作る必要があるでしょう。
- 病院の担当者のみが閲覧可
- (詳細な)住所
- 氏名
- 年齢
- 他の病歴
- 行政機関も閲覧可
- 識別番号
- (市町村名までの)住所
- 性別
- 年代
- 容態
感染症対策は病院や保健所が現場で行うのですから、現場の担当者が「新規患者」や「既存患者」のデータベース情報を更新する権限を持たせるべきです。
行政機関には「現場が入力した患者データの一部を閲覧できる権限」を持たせておけば、情報伝達の速度は最大値に近い状態を保つことができるでしょう。なぜなら、伝達経路におけるタイムラグをほぼゼロにできるからです。
“従来型の報告システム” は即時全廃にする必要はないものの、新システムがダウンした際のバックアップぐらいの扱いにまで下げる必要があります。そのように体制を作り替えなければ、貴重な医療資源を浪費し続けることになるでしょう。
人員を削減することがだけが効率化ではなく、「工数を削減」しても同じ成果が得られる
日本では効率化となると「人員の削減」が中心となり、「組織の規模を小さくすること」が行政の代表的な手法となりがちです。しかし、これは表面的な改革であり、本質的な部分での改革とは言えないでしょう。
作業の効率化で成功例となるのは「工数の削減」が基本だからです。
「関係機関10箇所に新型コロナウイルスの患者情報の報告」を日々行っていることを「データベースを1日1回更新する」に変えることができれば、これは立派な効率化です。IT に置き換えられる部分は適宜運用方法を改善するべきでしょう。
仕事量に変化がない状況で人員や人件費を削り続ければ、組織の実行能力が低下するのは必然です。『小さな政府』へと舵を切るのでないなら、IT を生かした工数削減による効率化を政治がもっと真剣に旗振りすべきと言えるのではないでしょうか。