「身に降りかかる火の粉は徹底的に叩き潰す」 これが生き残るための鉄則だ

 トルコで発生したクーデター未遂事件を受け、トルコ政府は非常事態宣言を公布するとともに、首謀者と名指しした『ギュレン教団』を徹底して取り締まる動きを見せているとNHKが報じています。

 「やりすぎ」との批判が高まる状況にあるのですが、生き残るためにはこのぐらいやらなければならないという現実もあることを覚えておく必要があります。

 

 トルコ政府はクーデター未遂を受けて発表した非常事態宣言に基づいて初めて法令を出し、イスラム組織「ギュレン教団」と関係がある多数の人道支援団体や、私立の学校の閉鎖を決めたほか、身柄の拘束期間の延長などを認め、徹底的な取締りを進めています。

 (中略)

 トルコ政府は「ギュレン教団」とつながりがある団体や個人は徹底的に取り締まる方針で、強権的な手法に国の内外から、懸念や批判が高まっています。

 

 トルコではこれまで、軍部が主導するクーデターで当時の政権が倒れたという歴史を有しています。

 しかし、今回のクーデターは失敗に終わりました。これまではクーデターを起こした軍部に民衆の支持が集まったのですが、今回は軍部ではなく、エルドアン大統領を民衆は支持したのです。

 また、市民が巻き添えになったこともニュースとなり、世界中に配信されました。これにより、エルドアン大統領の姿勢を批判することが多いヨーロッパ諸国の首脳が擁護の声をあげることは不可能となりました。

 結果的に、エルドアン大統領の権力基盤がより強固なものになると言えるでしょう。

 

 トルコ政府はイスラム組織「ギュレン教団」が深く関わっていると名指しし、取り締まりを徹底的に行っています。どれぐらい深く関わっているかは現時点では不透明ですが、“クーデター予備軍” といてマークされていたと思われるほどの勢いで粛清が進んでいるイメージがあります。

 ですが、トルコ政府からすれば、火の粉が降りかかったことは否定しようのない事実であり、問題に関わった当事者を厳罰に処すことは自らが生き残るために必要不可欠なことなのです。

 軍事クーデターを引き起こした勢力やそのシンパを野放しにしておくことは危機管理の点で明らかに問題です。第2、第3のクーデターを誘発させる大きな要因になるのですから、取り締まりを強化しないのであれば、国民を守る意思がないと見なされ、支持を失うことになるでしょう。

 トルコ国外から「強権的だ」との批判があっても、それ以上のことができる国はないのです。

 

 「選挙で民主的に選出された政権を軍事クーデターで倒そうとすることを認めるのか」とトルコがメディアの前でコメントすれば、発言の対象となった国はメンツが丸つぶれになります。

 「死刑制度を復活させるな」と主張しても、「なら、そちらの国で一般的に行われているように、裁判を経ずに疑わしい人物を現場で殺害すれば良いのだね」と皮肉交じりに返されるとダメージが大きいのはヨーロッパ側でしょう。

 トルコで政治権力闘争が生じると、その影響はヨーロッパにも波及します。特にトルコが抑え込みに協力している難民流入が再び活発化することになると考えられるからです。

 外国で起きた軍事クーデター未遂だから、「強権的な手法だ」などと当局の取り締まりに批判の声をあげることができている現状を冷静に分析する必要があるのではないでしょうか。