パラリンピック・自転車ロードレースで死亡事故、下りを攻めるかは自己責任とすべきでは?
リオパラリンピックの自転車ロードレースで死亡事故が発生したとNHKが報じています。
競技中に死亡事故が起きることは悲劇的です。必要な安全対策が取られていることはもちろんのことですが、自転車ロードレースという競技は「死と隣り合わせである」という現実から目を背けてはならないと言えるでしょう。
リオデジャネイロパラリンピックで、17日に行われた自転車男子ロードレースの運動機能障害のクラスで、イランの選手がレース中の事故で死亡したと、イランパラリンピック委員会が明らかにしました。
(中略)
ロードレースは、海岸沿いのコースとグルマリと呼ばれる山道のある地域を組み合わせた84キロのコースで行われ、事故は山道のコースで起きました。
事故が起きたのは『グルマリ』の周回コースとのこと。オリンピックでも使われていたと報じられていますから、グルマリ(登坂距離1.2km/平均勾配7%/最大勾配13%)とグロタフォンダ(登坂距離2.1km/平均勾配4.5%/最大勾配6%)のある “パンチの効いた急坂” がある方です。
もう1つの周回ルードである『カノアス/ヴィスタ・チネーザ』の方は「登坂の難易度は低いがテクニカルな下りがある」という評価でしたので、パラリンピックのコースから外した判断は正しかったと言えるでしょう。
事故についてですが、これはレース展開を見ないと対策の施しようがありません。なぜなら、トッププロによる自転車ロードレースででも死亡事故は起きているからです。
多くはウェイラント選手のように下りで落車し、頭部を強打したことが原因で亡くなるケースです。しかし、近年では中継車両やカメラバイクが増加したことで、大会関係者の車両が関係する事故も発生し、主催者側の対応も不可欠となっています。
近年の自転車ロードレースでは下りが重要な攻撃ポイントとなっています。
従来では「登りの登坂力」と「タイムトライアル能力」が勝負の分かれ目となっていたのですが、パワーメーターで出力値が正確に計測することが一般的になってからはタイム差が生じにくくなりました。そのため、“パワー” ではなく、“技術” がタイム差を生む下り坂が勝負ポイントとして認識されるようになったのです。
2016年のツール・ド・フランスでは第8ステージで、「ダウンヒル(=下り)は得意ではない」と見られていたクリス・フルーム選手が他の有力選手全員を下りで引き離す衝撃的なシーンを見せつけました。
サドルではなく、トップチューブに腰を落とし、ペダルを高速回転させて初見の下りを駆け抜けたのです。レースなのですから、他の選手とのタイム差を付けて勝利したいという欲求を持つことはアスリートとして自然なことです。
そのため、下りで落車のリスクを冒すかどうかは選手自身の裁量に任せるべきです。主催者がすべきことは無謀なアタックが起きないように、選手に向けてコーナーでの十分な減速を促す要員を配置することぐらいだと言えるのではないでしょうか。