絶対王者クリス・フルームの王朝にピリオドを打てる選手は誰か
自転車ロードレースの『ツール・ド・フランス』が22日に第20ステージが行われ、絶対王者のクリストファー・フルームがツール・ド・フランス3連覇を確定的にしました。
自身4度目のツール・ド・フランス王者に輝くフルームですが、32歳という年齢もあり、連勝記録を止める選手が出てくることでしょう。誰がフルームの連勝記録を止めるのかが来年以降の注目点と言えそうです。
1:フルームの強さの秘訣
フルームの強さの秘訣は「登坂力」と「タイムトライアル能力」の2つで秀でていることです。
自転車ロードレースでタイム差が付きやすいのは「山岳ステージ(登りゴール)」と「タイムトライアル(TT)」です。フルームはこの両方で力を発揮する上、チーム力が突出したチームに所属しているため、ライバル勢から大きく遅れる事態は回避できるという強みがあるのです。
近年は主催者がパヴェ(石畳)、激坂、ダウンヒルと露骨に “フルームが苦手なコース設定” を組み入れていますが、それでもフルームはツール・ド・フランス王者に輝いています。
もちろん、年齢を重ねることで瞬発力に依存する部分の能力は低下するでしょう。ただ、戦術面でカバーすることができる競技であるだけに「フルームが王者のまま引退」というシナリオもあると思われます。
2:フルームのライバルとなる選手たち
ツール・ド・フランス王者の称号をフルームから奪おうとすると、以下のどちらかを満たす必要があります。
- 山岳でタイムを稼ぎ、TTでのロスを抑える
- 山岳でのロスを抑え、TTでタイムを稼ぐ
「山岳ステージ(登りゴール)」と「タイムトライアル(TT)」の両方でフルームを上回る選手はいません。それができる選手がいれば、ツール・ド・フランス王者の称号をフルームから奪えているはずだからです。
その可能性が高い有力選手を確認することにしましょう。
リッチー・ポート(32)
打倒フルームの1番手はリッチー・ポートです。山岳とTTの両方でフルームと肉薄する能力を持ち、今大会(2017年)では優勝候補と見られていたからです。
ただ、「3週間の安定性に欠けること」と「ダウンヒルに難あり」という部分が懸念点となっています。
実際、2017年のツール・ド・フランスは第9ステージの危険な下りでの大落車でリタイア。ツールのコース設定ではダウンヒルが組み込まれる要素が強くなっており、ここで集団から遅れる事態に陥らないことが絶対条件と言えるでしょう。
タイムトライアルでフルームからの遅れを最小限にできる選手であり、山岳ステージで1分前後の貯金を作ることができれば、マイヨ・ジョーヌを得ることは可能だと思われます。
ロマン・バルデ(26)
フランスの期待はロマン・バルデでしょう。地元フランスのチームに属するフランス人クライマーで、2016年大会では総合2位に入った能力を有しているからです。
バルデの懸念点は「TT能力」です。山岳のスペシャリストであるクライマーは共通する問題点をどう埋め合せるかがマイヨ・ジョーヌ獲得に対する最大の課題と言えるでしょう。
ただ、フランス人選手であり、主催者が思いっきり “判官びいき” をしてくれます。バルデが優勝候補である限り、バルデ(や所属チーム)が苦手とするステージは極力抑えられることでしょう。
「チームタイムトライアル」や「40km 前後の個人タイムトライアル」が大会に組み込まれていないコース設定で、道を知っているという地元の利点を活かし切ることができるかがマイヨ・ジョーヌ獲得の鍵になると言えるはずです。
トム・デュムラン(26)
“打倒フルーム” という形で紹介されることはまだありませんが、トム・デュムランはその力を持っています。2017年のジロ・デ・イタリアで総合優勝を果たしていますし、フルームをタイムトライアルで打ち負かすことができる数少ない選手だからです。
フルームが所属するチーム・スカイは山岳ステージを基本的に一定のテンポで登坂します。強烈なペースで脱落者が続出しますが、一定ペースで登坂することはTTが得意なデュムランにとって歓迎すべき走法です。
“スカイ・トレイン” に上手く無賃乗車して山岳ステージを乗り切り、TTで逆転するということが可能になるからです。また逆に、TTで築いたリードを山岳で守り切るというパターンも十分にあり得ることです。
チーム・スカイの総合力と真っ向勝負で勝てるチームは単独では存在しないでしょう。チーム間で共闘すれば可能ですが、仲間割れで空中分解するリスクの方があり、現実的な選択肢とは言い切れないことが現実です。
スカイのチーム戦略を上手く利用し、個人の能力で勝敗が決する個人タイムトライアルで差を付けることができるデュムランが打倒フルームの最右翼と言えるのではないでしょうか。