クリス・フルームの戴冠を阻止する選手が出現、止めたのはチームメイトのゲラント・トーマス

 ツール・ド・フランス 2018 が現地7月29日にパリで閉幕しました。今大会は絶対王者のクリストファー・フルームが「4連続グランツール勝利なるか」が注目されたのですが、結果は3位でした。

画像:ツール・ド・フランス2018

 そして、戴冠を阻んだのがフルームのチームメイトで(親友でも)あるゲラント・トーマスでした。「優勝の本命候補」として名前が出ていなかったトーマスと、本命と見られていた2位トム・デュムランと3位フルームが明暗を分けた差を見ていくことにしましょう。

 

“王者の走り” をツール・ド・フランスの3週間に渡って見せつけたトーマス

 トーマスは2位デュムランに1分51秒、3位フルームに2分24秒の差を付け、マイヨ・ジョーヌを獲得しました。その要因となったのは以下の点でしょう。

  1. パンク、メカトラ、落車とは無縁だった
  2. 山岳ステージで先着し、ボーナスポイントを獲得
  3. タイムトライアルで失ったタイムは14秒

 ツール・ド・フランスで総合優勝を果たすには「運」が必須です。ライバル勢がパンク・メカトラ・落車などでタイムを落としたり、挽回のために力を使わさせられる一方で、優勝者はそうしたトラブルとは不思議と無縁です。

 今大会ではフルームが第1ステージで落車で約1分、デュムランが第6ステージでパンクで約1分を失っています。その一方で、トーマスはそのようなトラブルに見舞われることはありませんでした。

 その上、山岳ステージとタイムトライアルの両方で力を発揮したのです。『王者』として相応しい選手だったと言えるでしょう。

 

チーム・スカイは2019年のツールもダブル・エースが有力

 非常に気が早いことですが、トーマスとフルームが所属するチーム・スカイが来年(2019年)のツール・ド・フランスでどちらの選手を『エース待遇』にするのかという点に注目が集まっています。

  1. ゲラント・トーマス
    • 現王者(=ディフェンディング・チャンピオン)
    • 2年連続優勝が賭かる
  2. クリス・フルーム
    • ツールを4度制した王者(2013, 2015, 2016, 2017)
    • 『5勝クラブ』入りが賭かる

 両選手ともにエースを張る資格を有しています。そのため、『ダブルエース』で落ち着くことになると考えられます。

 その際、トーマスとフルームの両者に与えられる待遇は今大会と同じになると思われます。「互いに攻撃し合わない」「どちらかがトラブルで遅れた場合、もう一方は前方の集団に残る」という形でタイムトライアルやバッドデーで最終的にエースを決める方式が採られることになるでしょう。

 

「優勝候補の本命」として厳しいマークを受ける中で成績を残せるかがトーマスの課題

 次回のグランツールから、ゲラント・トーマスは「優勝候補の本命」と他のライバル勢から位置づけられ、山岳ステージでのマークが厳しくなることが予想されます。

 トーマスは第11ステージの1級山岳ラ・ロジエールでアタックし、メイン集団から抜け出してタイムを大きく稼ぎました。このシーンではメイン集団にフルームがいたため、ライバル勢は「エースのフルーム」の動きをチェックすることを優先したため、トーマスを先行させてしまいました。

 今後はトーマスも「フルームと同等のマーク」を受けることになる訳ですから、他の優勝候補からの厳しいマークを受ける中で、どのように立ち振る舞うかが成績に直結することになるでしょう。

 

 とは言え、トーマスやフルームはタイムトライアルでライバル勢から大きく時間を稼ぐ側の選手です。

 したがって、チーム・スカイの選手が総合優勝の証であるマイヨ・ジョーヌを獲得できるかはエガン・ベルナルのような「難関山岳ステージで最後の最後までエースをアシストできる選手がいるのかという点に集約される」と言えるのではないでしょうか。