諫早湾干拓訴訟、『開門を命じる判決』を確定させた立憲民主党(当時・民主党)は「該当の判決が無効になったことに対する見解」を示せ

 長崎県諫早湾の干拓事業において、「排水門の開閉」を巡る訴訟が長く続いています。国が相反する判決を抱えている状況だったのですが、30日に福岡高裁で「『開門を命じる判決』を無効化にする判決が出された」と NHK が報じています。

 この件に対し、立憲民主党は見解を示さなければなりません。なぜなら、『排水門の開門を命じる判決』を確定させたのは民主党・菅直人政権だからです。

 

 長崎県諫早湾の干拓事業をめぐり、国に排水門を開けるよう命じた8年前の確定判決について、福岡高等裁判所は「漁業者側が開門を求める前提となる漁業権がすでに消滅している」として、確定判決を事実上無効にする判決を言い渡しました。国は確定判決の後も排水門を開けていませんが、30日の判決は国の対応を追認した形となりました。

 (中略)

 国は8年前の確定判決に従わず門を開けていないため、制裁金としてこれまでに12億円余りを漁業者に支払っていますが、制裁金の支払いを停止する決定も出されたため、必要な手続きを済ませれば支払いの義務を免れます。

 本件は「排水門の閉鎖で被害を受けた漁業者」と「排水門の開放で塩害を受ける農業者」との対立が理由です。

 裁判は「主張が異なる者同士による争い」なのですから、対立関係が起きることは日常茶飯事です。この問題が注目される理由は「国が相反する判決を抱え、身動きが取れなくなったから」です。

 その原因を作ったのが民主党・菅直人政権だった訳ですから、菅直人政権の閣僚が中心となっている立憲民主党は本件に対する見解を示す責務があると言えるでしょう。

 

菅直人首相(当時)が「水門5年間開放」の判決を確定させた張本人

 長崎・諫早湾干拓訴訟で『開門を命じる判決』を確定させたのは菅直人首相(当時・民主党)です。

  • 漁業者(開門に賛成)
    • 2004年:佐賀地裁で一部勝訴、工事の仮処分が決定
    • 2005年:福岡高裁で処分取消、工事が再開
    • 2008年:佐賀地裁で「水門を調査目的で5年間の解放すること」を命じる
    • 2010年:福岡高裁も「水門を5年間解放」を命じる
  • 国 = 菅直人首相(民主党)
    • 福岡高裁が2010年に命じた「水門を5年間解放」に対し、上訴の見送りを発表
    • 「水門を5年間解放」の判決が確定
    • 開門の期限は2013年12月であることも同時に確定
  • 農業者(開門に反対)
    • 開門の差し止めを求め、長崎地裁に提訴
    • 2013年11月に「水門を当面開けてはならない」という仮処分命令が出る
    • 2015年:福岡高等でも水門開放要求は棄却

 菅直人首相は2010年12月に『開門を命じる判決』を確定させました。しかし、期限である2013年12月までに開門をしなかったのです。

 これが混乱の原因であることは言うまでもないでしょう。なぜなら、自らが確定させた判決に対し、必要な行動を起こさなかったからです。

 そのツケが制裁金という形で現在も支払われているのです。当時、菅直人政権で要職にあった議員らで結成された立憲民主党が諫早湾干拓訴訟に対する党の見解を示すことは当然と言えるはずです。

 

「開門判決の無効化」に動く自公政権、「地方の案件」に格下げして逃げ出した立憲民主党

 『開門せよ』と『開門してはならない』という2つの相反する判決を抱えた自公政権は「開門判決の無効化」に本腰を入れています。これは2017年4月末の時点で報じられており、覚えている人もいるでしょう。

 『開門を命じる判決』を確定させた菅直人政権が具体的な動きを期日までに起こさなかったのです。高潮や塩害という被害が予想される中で、開門を強行する理由は自民党(や公明党)には存在しません

 そのため、現在の安倍政権が『開門を命じる判決』の無効化に動くことは妥当なものと言えるでしょう。

 一方で、上訴を見送ることで『開門を命じる判決』を確定させた民主党(現・立憲民主党)の姿勢は大きな問題です。前身となった民進党では2017年新春都道府県連今年の抱負に掲載された佐賀県連が「県民の皆様と丁寧な対話を行う」という考えを示したことを報告する程度に留まっています。

 “国政マター” だったものを “都道府県マター” に格下げし、立憲民主党の党本部が「知らぬ、存ぜぬ」の立場を採り続けることは明らかに無責任と言わざるを得ません。

 

支援者が距離を置いた「開門派」に逆転のプランは見当たらない

 開門を要求する根拠となっていたのは『漁業権』ですが、これは「一定の水面において特定の漁業を一定の期間排他的に営む権利」と定義された “一種の利権” です。

 「我々にも生活がある」と既得権益の維持を要求したところで、世間一般は支持しないでしょう。『漁業権』という高い参入障壁でオイシイ思いをしてきた実態が報じられるほど、公に擁護してくれる人々が減っていくことを招いてしまうからです。

 また、国(= 自公政権)が進める政策は野党やマスコミが批判することが一般的ですが、諫早湾干拓事業では期待できません。

 なぜなら、民主党政権(= 現・立憲民主党)が「開門推進派」であり、国に相反する判決を抱えさせた元凶だからです。もし、「開門調査を実施すべき」と発言しようものなら、「政権時に措置をしなかった政党が無責任に発言するな」と一括されることでしょう。

 そのため、立憲民主党は諫早湾干拓訴訟を “なかったもの” として扱っている状況なのです。「真っ当な政治」を掲げるのであれば、自らが過去に政治家として推進してきた政策に対する現在の見解を示す必要があると言えるのではないでしょうか。