TPPにある投資家保護協定は国家による取り込み詐欺を防ぐ目的で存在する
民進党の原口一博議員が自らのツイッターでTPPは自由貿易協定ではなく、投資家保護協定だと批判しています。
民進党のような政党にとっては投資家保護協定が存在することは苦痛でならないでしょう。なぜなら、民主党政権時に見せたデタラメな政権運営をすると、政党そのものが消滅するリスクがあるからです。
TPP協定は投資家保護協定であり国家主権と人権の制約協定ではないかと私は感じている。そもそもそんな協定を結んで誰が幸せになると言うのか?
TPP によって幸せになれるのは “法令を遵守する企業” であり、“そのような企業に出資する投資家” であり、“一般の消費者” です。
逆に、『高い参入障壁』による過保護な環境に甘えてきた生産者には厳しい未来が待ち受けていることでしょう。そのツケを “一般の消費者” が知らずに払わされてきた実態が TPP 締結によって白日の下にさらされるのです。
もし、民主党政権時に「TPP に該当する貿易協定」が存在していれば、投資家保護協定による賠償金が政府に科されていたことでしょう。以下のようなシナリオが考えられるからです。
鳩山由紀夫首相(当時)は2009年に温室効果ガスの排出量削減を国際公約とし、原子力発電による発電比率を 50% にする計画を立てました。
原子力発電の比率が上がることを意味しており、原子力発電分野への投資を呼びかけているも同然です。この当時に多国籍間の貿易協定が存在していれば、技術力を持った日本国外の企業も原子力分野に参入という形で関わっていたことでしょう。
しかし、2011年の東日本大震災を受け、民主党は原発政策を180度転換させます。
「原発ゼロ」を政策として打ち出し、原発産業を敵視したのです。民主党政権による一連の政策転換は “国家による取り込み詐欺” と同じです。
「原発は魅力的な産業である」と宣伝していたにもかかわらず、政権の一方的な都合で手のひらを返したのです。投資家保護協定が存在しなければ、損失を取り戻すことすらできず、投資を行った企業は泣き寝入りを強いられることでしょう。
このような事態を防ぐために TPP には『投資家保護協定』が存在しているのです。
電力消費者が原発で発電された電力を購入せず、ビジネスが成り立たなくなった場合は原発産業に投資した企業・投資家を保護する必要はありません。しかし、政府の都合で前提条件そのものを変更するのであれば、損失分を補填する責務が発生して当然です。
実際に、アメリカ企業がメキシコ中央政府からの廃棄物埋め立て事業の許可を持つメキシコ企業を買収し、施設の建設を行おうとしたところ、地方政府が建設予定地の住民が反対運動をしたため建設停止を命じたことがありました。
メキシコ中央政府はアメリカ企業に対し、「地方政府は中央政府からの許可を拒否できない」と説明していたため、メキシコ政府は『投資家保護協定』に基づき提訴され、敗訴したため約1700万ドルの賠償金を命じる判決が下されています。
現在の日本の原子力政策に当てはめると、「権限の持たない鹿児島県知事や新潟県知事が原子力発電所の運転再開を妨害している」、「新規建設の審査を行う原子力規制委員会が設置許可を既に得ている原子力発電所の再稼働に対する審査を行い、速やかな運転再開を阻害している」と訴えられるケースが想定できるでしょう。
上記いずれのケースでも、原子力発電所の運転再開を止める法的根拠がない状況ですから、『投資家保護協定』を根拠に提訴されるとかなりの確率で敗訴となり、賠償金を科される結果になると思われます。
つまり、法令というルールに則り、真面目にビジネスを行っている企業や従業員、投資家、一般の消費者にとって、『投資家保護協定』がマイナスに作用することは稀なケースと言えるでしょう。むしろ、民進党が民主党政権時に見せていた “俺様ルール” で好き勝手にやるような政府や企業が痛い目を見るだけなのです。
ちなみに、原口議員が引用しているツイートの「TPP によって医療崩壊が...」という主張は韓米FTA協定に反対する勢力(ハンギョレ新聞など)が述べていた煽り文句だけが日本に輸入されたものです。
2013年3月の時点で高安雄一氏が日経ビジネスに「TPPを議論するための正しい韓米FTA講座」というシリーズコラムで韓国政府によるデータ付きの反論が存在することを紹介しています。
まずはこのような基礎部分を踏まえた上で、議論をすべきでしょう。民進党が提案型の政党になったと言うのであれば、そのような動きを見せることが求められているのではないでしょうか。現状では民主党時代と何も変わっていないか、むしろ劣化しているように思われます。