原発大国・フランス、ガソリン車を禁止してEV社会への大転換を図る
日経新聞によりますと、フランス政府が2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止する方針をまとめたとのことです。
EV 車(電気自動車)へとシフトすると予想されますが、原発大国であることはフランスにとっての利点と言えるでしょう。パリ市内で大気汚染が問題になっていることもあり、社会全体が大きく変わる政策転換と言えそうです。
仏のユロ・エコロジー相が6日に記者会見し、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」の目標達成に向けた、二酸化炭素(CO2)排出削減の計画を発表した。柱の一つが、40年までのガソリン車など走行時にCO2を排出する車の販売禁止。さらに22年までに予定する石炭火力発電所の停止なども着実に進め、50年までに国全体のCO2排出量を差し引きゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すという。
車と火力発電に対する風当たりが強くなる見通しと言えるでしょう。
ただ、ヨーロッパは陸続きであり、フランスがガソリン車などの販売を禁止しても、隣国からガソリン車がフランス国内に入ることは可能ですので対応策が必要になることは事実です。
1:首都パリの大気汚染は深刻
環境先進国のイメージがあるフランスですが、現実は異なります。なぜなら、深刻な大気汚染が度々発生し、“大気浄化策” が行われているという状況だからです。
【12月8日 AFP】フランス・パリ(Paris)は7日、冬季に発生したものとしては過去10年で最悪の大気汚染に見舞われた。市内では大気浄化策として、公共交通機関の運賃が無料となった他、自動車の交通量を半減させる規制が敷かれた。
「中国政府の対策」を笑うことはできません。フランス政府が実施した対策は中国のものと同じであるからです。ただ、応急処置的な要素が強い対策であり、抜本的な対策になっていないことが課題であることは言うまでもないことなのです。
2:ディーゼル車とガソリン車の販売禁止は抜本的な解決策
フランス・マクロン政権が打ち出した「ディーゼル車およびガソリン車の販売禁止」は大気汚染問題に対する抜本的な解決策と言えるでしょう。
パリは地形的に盆地で排気ガスが滞留しやすく、排ガス不正問題があったように想定値以上の排気ガスが出ていることが現実なのです。パリで大気汚染が問題となるのは風が弱く、大気汚染物質が流されたなかった時ですから、問題としては深刻なレベルです。
その大きな原因であるディーゼル車とガソリン車の販売を将来的に禁止することは “環境に配慮する” 姿勢を示しているマクロン政権の方向性と合致しているのです。
3:原発大国という事実が EV 大国に向けた大きな足がかりとなる
ディーゼル車とガソリン車の販売を禁止するのであれば、代替の交通手段が不可欠です。その最有力候補は EV (電気自動車)となるでしょう。
ただ、カーボンフリーを訴えながら、火力発電をするようでは意味がありません。車から排出されていた二酸化炭素(CO2)が、火力発電から出るようになったという “付け替え” が起きたにすぎないからです。
しかし、フランスは世界屈指の原発大国です。「発電量比率を下げる」と宣言していますが、「発電量(の絶対値)は維持する」としており、安価な電力源は確保されている状況です。
- 原子力の発電量比率(フランス)
- 2014年:6,313万kW(全体の75%)
- 2025年:6,320万kW(全体の50%)
コストの安い原子力発電を使い、EV 車の割合を増やすことができれば、ディーゼル車やガソリン車のシェアは下がることになります。これは大気中に放出される二酸化炭素などを減らすことに直結しますし、大気汚染物質も減ることでしょう。
そのための初期投資などによる負担をフランス国民が受け入れるかが鍵になるはずです。
4:電気代が高騰したままの日本には無理な課題
日本では EV 車の普及は難しいと言えるでしょう。その最大の理由は「電気代が高すぎる」からです。
消費者が購買を決める大きな要素は「車体価格+燃料費」です。車体価格が多少高くても、利用頻度が高い人は燃料費を重視して購入を決断します。
しかし、日本では FIT の影響で電気代は今後も上昇し続けることが確定的です。“燃料費が高くなることが確定的” である EV 車を多くの人が買い求めるという状況にはなりづらいと言えるでしょう。
「パリ協定」を神聖視するマスコミこそ、マクロン政権のような現実的な温暖化対策案を示すべきなのではないでしょうか。