中国が運転中の原発数でも日本を抜いて3位に浮上、稼働数が少ない日本は電気代高騰で競争力が削がれる傾向が強まる

 日本原子力産業協会が発表している『世界の原子力発電開発の動向(2019年版)』で「中国が運転中の原発数で初めて世界3位になった」と伝えていると NHK が報じています。

 中国の国内事情を考慮すると、2位のフランスを抜くのは時間の問題です。また、アメリカを抜いて首位に立つことも現実的であり、企業にとっても「安価な産業用電力」は魅力的に映ることを周辺国は認識する必要があるでしょう。

 

 中国で運転中の原子力発電所の数は、ことし1月時点で44基となり、世界3位となりました。一部の先進国で原発に依存する割合を引き下げる動きがある一方、中国での開発は加速していて、世界の原発建設の勢力図に変化が見られています。

 原発関連のメーカーなどでつくる団体、「日本原子力産業協会」のまとめによりますと、ことし1月時点の中国での運転中の原発は前の年より7基増えて44基となりました。

 NHK が記事に使った元ネタは日本原子力産業協会がプレスリリース(PDF)で報じた内容でしょう。

 その中で、中国で運転中の原子力発電所の数が示されており、日本を抜いて3位になったことが確認できます。ただ、注意すべき点があることも事実です。

 

「運転停止中の原発」も「運転中(= In Operetion)」としてカウントされている

 日本国内に運転中の原発基数は38と紹介されています。これは「運転中」の定義が「In Operation」であり、稼働が止まっている原発も「オペレーションで停止している」と言えることから「運転中」に含まれているためです。

表:世界の原子力発電開発の現状(2019年1月時点)
運転中 建設中 計画中
アメリカ 1億305万kW
(98基)
220万kW
(2基)
126万kW
(1基)
フランス 6588万kW
(58基)
163万kW
(1基)
0
中国 4463万kW
(44基)
1409万kW
(14基)
2574万kW
(24基)
日本 3804万kW
(38基)
414万kW
(3基)
1158万kW
(8基)

 中国は『運転中』の原発は “稼働” していますので、稼働状況では世界3位になっていました。今回は「仮に日本にある『運転中』の原発がすべて稼働していたとしても、中国の発電量の方が大きい」ため、レポートで紹介される数値の上でも世界3位になったのです。

 経産省が発表(PDF)した2019年3月15日時点での日本国内で再稼働した原発は「9基・913万kW」に過ぎません。

 世界10位に何とかランクインできるレベルで、6位に付ける韓国(24基・2269万kW)の半分にも満たない数字なのです。政府が「安価な発電源を捨てる」との政策を推し進めれば、電気代が高騰し、産業が壊滅状態になるのは当然です。反原発の “ツケ” が出るのはこれからが本番と言えるでしょう。

 

中国が原子力発電に注力する理由

 中国が原子力発電に注力する理由は「国内のエネルギー事情」が大きく関係しています。電気事業連合会が発表している主要国の電力事情からも明らかです。

画像:中国と日本の電源別発電量構成比

 中国の主要電源は「石炭」で 70% 弱を占めています。石炭火力は発電コストが廉価なのですが、大気汚染の主な原因であるため、割合が高すぎることが問題なのです。

 そのため、中国政府は「原子力発電の割合を(他国と同様の)20% にまで引き上げ、石炭火力に置き換える方針」を採っているのでしょう。これは合理的な政策方針と言えるはずです。

 電気代が上昇する要素はありませんし、大気汚染問題は緩和されます。また、電気自動車(= EV)を政府が義務付けることで、自動車の排気ガスによる問題も解消へと向かうことが可能になるからです。日本政府もこの現実を認識する必要があるでしょう。

 

「安価な産業用電力」は企業にとって魅力的な投資要素

 日本の電力政策は「不合格」と言わざるを得ないでしょう。これは安倍政権でさえ「不合格」であり、現在の野党が提唱する政策は「論外」というレベルです。

 理由は「いずれの政党も『廉価で安定した産業用電力』を軽視しすぎているから」というものです。

 日本は「原発再稼働に否定的・FIT・電力自由化」と電気代が上昇する政策を積極的に行っています。電気代が上がるほど製造コストは上昇するため、企業は市場での競争力を失ってしまうのです。

 そうなると、法人税による税収が減少し、政府予算が不足してしまいます。短期間の逆風になら耐えられる経営体力を持つ企業であっても、中長期に渡って耐えた上で成長することは不可能です。

 雇用に貢献する企業に対して、“外資企業とのハンデ戦” を要求している時点で論外なのです。これを与野党に関係なく行い、多くの有権者・国民が支持しているのですから、日系企業が市場で敗ける要因になっていると言えるでしょう。

 

 活動家の “お気持ち” に配慮したことによる見返りは「経済不況」という形で現れる場合があるのです。「反原発・再生可能エネ促進」はその傾向が極めて強く、現実を見据えた判断ができないことによる “ツケ” は大きいと認識する必要があると言えるのではないでしょうか。