小泉進次郎議員の「原発で福島の復興が遅れた」との主張は誤り、原発再稼働がなければ事故処理費用は捻出できない

 福島第2原発の廃炉を表明した東京電力に対し、自民党の小泉進次郎議員が「決断が遅すぎる、(廃炉の決定が遅れたことで)復興がどれだけ遅れたのか」との記者団に述べたと産経新聞などが報じています。

 ただ、小泉議員の主張は間違いです。なぜなら、原発再稼働によって得られる利益が廃炉の原資だからです。もし、再稼働を認めずに廃炉を要求するのであれば、その費用は要求する側が負担すべきと言えるでしょう。

 

 自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長は15日、東京電力の小早川智明社長が福島第2原発全4基を廃炉の方向で検討すると表明したことについて「やっとその日が来たかという思いと同時に怒りが湧いてきた。決断の遅さが原因で、どれだけ福島の復興が遅れたか」と述べた。国会内で記者団の質問に答えた。小泉氏は内閣府・復興政務官として廃炉を主張した経緯がある。

 多くの政治家が「廃炉の費用はどのように積み立てられているのか」を知らずに反原発を騒いでいる傾向があります。

 財源を無視した政策を敢行すると、どういった結果が待ち受けているのかは民主党政権が示しています。同じ失敗を “自民党のホープ” が繰り返そうとしていることは致命的と言えるでしょう。

 

「原発40年運転で廃炉費用の捻出」がルール

 まず、廃炉費用は電力会社が持つ規則で原子力発電所が設置・運用されて来ました。原発を40年運転することで得られる利益から廃炉に必要な費用を出すという形態が採られていたのです。

 しかし、東日本大震災後の行政対応により、電力会社が積み立てていた廃炉費用が消え去る結果となりました。

  • 「原発は稼働中」との扱いで、電気代値上げを認めず
    → 電力会社の財務状況が悪化
  • 資産(=廃炉費用)の売却や放出を電力会社に要求
  • 安全対策を既存原発に遡り適用し、支出を増加させる

 電力会社は廃炉費用を積み立てていた訳ですから、財務状況は他業種と比較すれば良好でした。ところが、震災後は “それらの資産” を「電気代の値上げ抑制」などに費やすことを強いられたため、廃炉費用そのものがなくなってしまったのです。

 経済への影響が大きいだけに、活動家や一部政治家の煽動に流されると大きな支出が待っていることは覚えておかなければなりません。

 

政治的な動機で「原発の営業運転に損害を与えた」ため、税金による補填は避けられない

 原子力発電所の運転を止められるのは「電力会社が定められた規則を守っていなかった場合」に限られるでしょう。

 民主党政権が決めた『40年ルール』に科学的根拠はありませんし、震災後に政治的な理由で原発の運転を止めました。これは電力会社の財産権を侵害する行為であり、経産省からの “嫌がらせ” を受けたくない電力会社が訴訟に踏み切ってないだけです。

 「運転を止める」、「後出しで安全対策を要求する」との行為をした訳ですから、その分の補填は避けられないでしょう。

 また、電力消費者は『電気代の値上げ抑制』という形ですでに恩恵を受けてしまっているのです。「使える原発は速やかに運転再開すべき」、「安全対策基準の遡り適用はおかしい」と声をあげていた人以外は国が廃炉費用を出すことに文句を言う資格はないのです。

 

 原子力発電による電力供給を途絶えさせれば、その分を他の発電源で供給することになります。再生エネ界隈は FIT で “ボロ儲け” を狙える訳ですから、反原発派の運動を活発化させているのでしょう。

 ただ、そのツケは電気代という形で全電力消費者に押し付けられることになるのです。

 原発を再稼働させることで、電気代は下がり、電力会社は廃炉費用を積み立てることができるのです。これを真っ向から否定する小泉進次郎議員のような人々は廃炉費用をどこから用立てるのでしょうか。

 原発廃止を訴えるのであれば、これらの点を明らかにすることが最低限の責務と言えるのではないでしょうか。