毎日新聞が『緊急の電力融通が実施された事実』を無視し、「電力は足りている」との悪質な主張を掲載
毎日新聞が「『猛暑』なのに、なぜ『電力』は足りているのか」との記事を掲載しています。この記事は事実と異なる主張に基づいており、悪質と言わざるを得ません。
■ 毎日新聞が掲載した記事
毎日新聞は経済評論家の荻原博子氏に語らせる形で以下のような記事を掲載しています。
この暑さの中、エアコンの前にへばりついて離れられない。外出なんてとんでもないという方も多いことでしょう。
ところが、これだけみんながエアコンをフル稼働させ、電力を大量消費しているにもかかわらず、「電力不足で停電に!」「原発を再稼働しないとダメだ」という声は、いっこうに聞こえてこない。
この記事が致命的なのは「経済評論家の肩書きを持つ人物が『電力供給の実態』を知らずに批判をしていること」でしょう。「悪質なデマ記事」として批判しなければならない内容になっています。
■ 事実
1:原発を再稼動させた関西電力が『電力融通』を受けたという現実
「電力は足りている」との主張はすぐに矛盾が突かれる程度のものです。なぜなら、「関西電力が7月18日に他社から電力融通を受けた」と日経新聞などが報じているからです。
関西電力は18日、猛暑の影響で電力の需給が逼迫したため、ほかの電力会社から供給を受けたと発表した。経済産業省の認可法人、電力広域的運営推進機関を通じ、午後4~5時に100万キロワットを融通してもらった。同時間帯の使用率が自社の供給力の98%を超えると見込まれていた。
荻原博子氏が言うように「電力が足りている」のであれば、電力融通を受ける必要すらないのです。原発を再稼動している関電ですら、他社からの電力融通を受けている現実を直視しなければなりません。
2:電力各社は『ネガワット取引』を行使し、企業に “半強制的な節電” をさせている
「震災後は節電があった」ことを理由に、「電力は足りている」と主張する反原発派もいるでしょう。しかし、その認識は間違いです。
なぜなら、『ネガワット取引』が実施されているからです。
関西電力が「ネガワット」取引と呼ぶ新たな節電手法を実施したことが分かった。事前契約に基づき工場などに時限節電をしてもらうものだ。既に実施済みの東京電力ホールディングスや九州電力に続いて関電も踏み切ったことで、電力需給を安定させる手法として定着しそうだ。
この記事は日経新聞が報じたものですが、企業(= 主に工場)に対し、“時限節電をさせる契約” が存在するのです。
東電・九電に加え、関電が契約に基づく権利を行使したのですから、節電は現実に行われているのです。節電の対象が「割安な基本料金との引き換えにネガワット契約を締結している企業」であり、「一般の電力消費者」ではありません。
そのため、節電が行われていることを世間一般が感じないだけなのです。
3:東京電力が「震災後に北陸電力の供給能力に匹敵する火力発電所を建設した」という現実
柏崎刈羽原発が停止する中で東京電力が供給能力を維持できている理由は「北陸電力の全供給能力に匹敵する火力発電所を建設できたから」です。
- LNG火力(計468万kW)
- 川崎火力発電所2-1号機(50万kW、2013年2月)
- 鹿島火力発電所7号系列(126万kW、2014年6月)
- 千葉火力発電所3号系列(150万kW、2014年7月)
- 川崎火力発電所2-2号機(71万kW、2016年1月)
- 川崎火力発電所2-3号機(71万kW、2016年6月)
- 石炭火力(計160万kW)
- 広野火力発電所6号機(60万kW、2013年12月)
- 常陸那珂火力発電所2号機(100万kW、2013年12月)
北陸電力の供給能力が約500万kWなのですから、東京電力が用意した火力発電所の能力値がどれだけ大きいかを実感できるでしょう。
当然、建設時に必須である環境アセスメントは “特例” で飛ばしましたし、老朽化した火力発電所も無理やり延命させて、電力危機を乗り切りました。「原発が政治的な理由で止められたから、現場を担当する電力会社の社員が必死で供給能力を維持した」のです。
これらの事実を無視し、「幸せな老後」などと “ポエム” を述べる経済評論家は致命的と言わざるを得ません。また、事実と異なる内容を経済評論家の口から語らせるという手法を採った毎日新聞も同罪と言えるでしょう。
「幸せな老後」の根幹となる社会インフラを必死で支えているのは現役世代であり、この現実を “お花畑” が蔓延している高齢層の読者に対して正確に伝えることが新聞の役割と言えるのではないでしょうか。