未稼働計画の失効により太陽光バブルが崩壊、失効分は稼働分と同じ約3割

 日経新聞が『太陽光発電、宴のあと』との記事を掲載しています。

 民主党政権下でスタートし、“太陽光発電バブル” を生み出す最大の要因となった FIT ですが、世界最高水準に設定された全量固定価格買取制度による弊害は大きく、軽視できるものではありません。

 口先だけのキレイゴトは通用しないことが改めて浮き彫りにかったケースと言えるでしょう。

 

 再生可能エネの電気を一定期間決まった価格で電力会社に売れる固定価格買い取り制度(FIT)は2012年に始まった。原子力発電所事故を機にクリーンエネに注目が集まり、中でも太陽光発電は設備設置が比較的容易、当初は40円という買い取り価格ーー。売電収入は株式や債券と比べて高い利回りが期待でき、申請が膨れ上がった。太陽光バブルだ。

 まず権利だけ取って建設は後回しというケースも続出、副業として参入した企業も多かった。ドイツの2倍超と世界的にも高水準の価格の売電権利を、はなから転売する目的で申請したケースもあった。

 (中略)

 買い取り費用の一部は国民が電気代と一緒に賦課金として払っている。平均的な家庭で月700円。メガソーラーがどんどん増えると国民負担が増える事情があり、政府が矢面に立つことになりかねない。クリーンエネ普及は各論では様々な思惑が交錯する。

 いびつな現実を前に政府はFIT法を改正。買い取り価格は21円となった。経済産業省は約46万件が失効した可能性があると試算する。稼働中の産業用太陽光発電所と同水準の出力分が失われたことは、メガソーラー新設ラッシュが再び来ないことを示し、太陽光パネルなど関連メーカーに暗い影を落とす。

 

 

1:稼働済みの施設と同量の発電計画が失効

 ビジネスを手掛けないことを理由に排除された事業者が保持していた発電量は 2800 万キロワット。これは稼働済みの産業用太陽光発電の総出力を少し上回る値です。

画像:日経新聞が報じた稼働中の太陽光発電の割合

 つまり、認定された発電計画を状況別に整理した割合は以下のようになります。

  • 稼働済:3割
  • 未稼働:7割
    • 計画中:(全体の4割)
    • 計画失効:(全体の3割)

 日経新聞は世帯数で報じていますが、「認定済みの全発電量における3割の計画が失効した」と書くべきでしょう。太陽光発電がどれだけデタラメな計画に基づき、FIT という形で消費者の生活を圧迫しているかが浮き彫りになるからです。

 

2:太陽光発電で儲けたのは “資金を持った政商” と “投資家” だけ

 ドイツの2倍の買取価格を当時の民主党政権に認めさせ、電力消費者に損をさせる形で太陽光発電はスタートしたのです。

 平均的な家庭で既に月額700円の負担増が強いられています。現状で年間8400円の負担が FIT によって生じているのですが、太陽光発電による発電量が増えれば、負担額はさらに増加します。

 “クリーンなエネルギー” の普及に熱心なのは裕福な人だけでしょう。各家庭で電気代が年間1万円以上は上がることになるのです。

 これでは電力消費者から反感を買いますし、電気代という形でコストを強いられる企業の競争力は低下します。その結果、工場の海外移転に歯止めがかからず、経済が低迷する原因になる訳ですから野放しにはできないと言えるでしょう。

 

3:“太陽光発電による売電収入” をアテにしている時点で普及は絶望的

 「メガソーラー(太陽光発電)でエコに貢献」などと主張する人もいるでしょうが、実態は異なります。現実は「FIT を利用して高額な値段で売電し、安い他の電力源を使用して “利ざや” を稼ぐ」というビジネスモデルなのですから、好感を持たれる要素はないのです。

 FIT による請求書が送りつけられるのは『すべての電力消費者』です。

 太陽光パネルを購入し、設置できる “一部の金持ち” が『すべての電力消費者』から FIT を通して儲けているのです。その上、発電量は天候次第で雨天時や夜間では発電することはできない欠点も抱えています。

 技術的な尻拭いを既存の大手電力会社が強いられており、負の遺産になることは時間の問題と言えるでしょう。「環境に配慮しているように見える」というイメージしかメリットがない状況だからです。

 

  1. 太陽光パネル設置のための森林伐採・造成
  2. 無理な造成による土砂崩れのリスク
  3. 屋上設置時の火災・落下時のリスク
  4. パネルに含まれる有害物質の廃棄問題
  5. 明らかに割高なコストが FIT で強制的に負担させられている点

 具体的に、上記のような問題が太陽光発電には存在しているのです。この点に対し、反原発派を中心とする再生可能エネルギー推進論者から具体的な対策は聞こえてきません。

 「原発より安い」と言うのであれば、これらの問題が “取るに足らないレベル” であることをデータを根拠に示してくれるでしょう。実際にはそれができないから、太陽光発電バブルが弾けることになったのではないでしょうか。