“大甘”と言われた栃東の横綱昇進基準を下回る内容で日本人横綱を誕生させることに反対する

 平成29年初場所で大関・稀勢の里が14勝1敗で優勝したことを受け、横綱昇進確実という流れになっています。

 興行的には “日本人横綱” は重要な存在と言えるでしょう。しかし、内規として定めれた要件を歪めてまで無理に誕生させる必要はないはずです。

 ゲタを履かせることは本人だけでなく、周囲にもマイナスの影響を及ぼすと考えられることが理由です。

 

 大関・稀勢の里が残した直近3場所の成績は以下のとおりです。

画像:稀勢の里が残した成績

 横綱昇進の内規は「(大関の地位で)二場所連続優勝、もしくはそれに準ずる成績」となっています。

 

 大関として連続優勝すれば、横綱昇進は確実です。また、横綱・鶴竜が昇進した時のように、優勝決定戦で横綱(白鵬)に敗れて賜杯を逃すも、次の場所で優勝したのであれば、昇進に異議を述べる人はいないと言えるでしょう。

 ところが、『大関・稀勢の里』の成績は “準ずる成績” に該当するものではありません。もし、横綱昇進を認めるのであれば、過去に大関・栃東の昇進を見送った理由との整合性が取れなくなってしまいます。

 

画像:栃東が残した成績

 平成18年の初場所で優勝した大関・栃東は続く春場所が「綱取りの場所」と位置づけられました。その際、「13勝(2敗)なら、優勝でなくても昇進」、「12勝(3敗)でも、優勝なら昇進」という条件が “甘すぎる基準” として指摘されたのです。

 結局、12勝3敗で優勝を逃し、横綱昇進は見送られることとなりました。

 なぜ、大関・栃東のケースを取り上げたかというと、直近2場所の成績が稀勢の里が残した成績と同じになるからです。順序が違うだけと言えるでしょう。

 

 稀勢の里の「先場所で3横綱を倒しての12勝3敗」を評価するのであれば、栃東の「今場所で(当時全盛の)朝青龍と2大関、(場所後に大関に昇進する)白鵬を倒しての12勝3敗」も等しく評価しなければなりません。

 『先場所の成績』と『今場所の成績』が逆であった場合、横綱昇進を推薦するに値する内容と成績だったかを想像してみる必要があると言えるでしょう。

 ゲタを履かせて、日本人横綱を誕生させた結果、短命横綱となればダメージを被るのは角界です。また、金星供給を連発されると、“金星手当” による財政面でのダメージもボディーブローのように効いていることが予想されます。

 その点においても、今場所(平成29年初場所)終了後の横綱昇進は見送り、来場所(平成29年春場所)を「綱取りの場所」とするべきです。

 

 ただ、12代二所ノ関(元大関・若嶋津)が審判部長を務めており、二所ノ関一門から横綱を誕生させたいという “動機” がありますので、このまま横綱・稀勢の里が誕生することになると思われます。

 横綱審議委員会で反対意見が出るか、満場一致で昇進が決まるのかが注目点になると言えるでしょう。