「沖縄の民意」の中に “地元・辺野古の民意” は含まれていないという不都合な真実
在日アメリカ軍の普天間基地を名護市辺野古に移設することを巡る工事が再開されたとNHKが伝えています。
これに対し、反対派が「沖縄の民意」を持ち出しています。ですが、最高裁での判決に従わず、地元の民意を無視して要求が共感を呼ぶことはないと言えるでしょう。
沖縄のアメリカ軍普天間基地の移設に向けて、名護市辺野古の沖合では、台船で運び込まれたコンクリートブロックを海に投入するため、沖縄防衛局が6日午前9時前からクレーンが付いた船に移す作業などを始め、海上での埋め立て工事に着手しました。
(中略)
妻が沖縄出身だという58歳の大阪の男性は「沖縄の自然を壊すことになるので憤りを感じます。沖縄では知事選挙や国政選挙などで辺野古への移設に反対を訴えている人が当選しており、政府は沖縄の民意を大切にしてほしい」と話していました。
反対派は辺野古への移設にあらゆる手段を用いることを明言していますが、効果はない状態に陥っています。
沖縄県が訴えた裁判は敗訴しました。また、「確定判決に従い、協力する」という和解条項を遵守する責務があるにもかかわらず、対決姿勢を強めるというスタンスを採っているのです。
“オール沖縄” が「民意」を理由に基地移設の反対を訴えていますが、その民意自体があまり説得力を持たないことをメディアは意図的に隠していることを見逃すことはできません。
まず、移設先である名護市と辺野古の位置関係は以下のとおりです。
名護市が「東シナ海」と「太平洋」の両方に面していることを知らない人も多いでしょう。市役所のある名護地区は「東シナ海」に面しており、辺野古がある久志地区は「太平洋」に面した地域なのです。
人口は61,683人なのですが、地区別の人口を見ると “地元” の定義を疑う必要が生じることを見逃すことはできません。
名護市市民課が平成28年(2016年)3月31日現在の人口数として発表している数字は次のとおりです。
- 名護地区:35,922
- 屋部地区:10,720
- 屋我地地区:1,533
- 羽地地区:9,116
- 久志地区:4,392
- 辺野古:1,870
名護地区とその北西に隣接する屋部地区の人口は名護市の 75.6% を占めるものです。この実態を見た上で「名護市の意見は地元の意見と見なすことができるのか」を論じる必要があるでしょう。
マスコミは「沖縄県や名護市は辺野古への移設に反対している」と主張していますが、菅官房長官は会見で「辺野古の3区長は条件付きで移設に賛成」と反論しているのです。
「地元の民意を無視するな」と主張するのであれば、本当の地元である『辺野古の意見』が最重要視されなければなりません。
しかし、『移設先である辺野古の意見』は無視され、反対意見が多数派となる最小の自治体単位である『名護市の意見』が “地元の民意” としてマスコミは報じているのです。
これは地元の民意とは呼べないものでしょう。もし、このロジックを認めるのであれば、『日本国民の意見』も “民意” として成立しなければならないからです。
年間3000億円を超える振興予算は国民の税金です。沖縄県の予算に匹敵する補助金を受け取っておきながら、「沖縄だけに負担を押し付けている」という主張は論外と言えるでしょう。
他の地域とは別に振興予算を受け取っている沖縄県は予算を付けた日本政府にどのような形で “対価” を提供しているのでしょうか。『過激派の楽園』を提供している現状では沖縄に対する政府の姿勢は単なる甘やかしに過ぎず、方針転換すべきとの批判を呼ぶだけです。
普天間基地の移転先である辺野古地区が条件付きで移転を認めているのです。政府が約束した条件を守り、真摯に対応しているから部外者である名護市や沖縄県が「オール沖縄の民意」を持ち出して反対しているのでしょう。
地元が反対しているのであれば、『辺野古地区の住民による多数派の意見』として反対意見が取りまとめられているはずだからです。
基地問題に対し、「地元の意見」として紹介されているものが「基地のお膝元からの意見」が完全に抜け落ちていることは奇妙なことと言えるでしょう。これは外部から活動家が遠征してまで反対活動を行っているということを示しているのではないでしょうか。