玉城沖縄県知事、『辺野古埋め立ての是非を問う県民投票』による弊害を無視して県内の市町村に “是正” を要求する

 NHK によりますと、玉城デニー沖縄県知事が「辺野古埋め立ての是非を問う県民投票」を当初の予定どおり実施する考えを示したとのことです。

 ただ、この選択は極めて不味いと言わざるを得ないでしょう。なぜなら、知事としての仕事ぶりを問題視される原因となり得るものだからです。衆院・沖縄3区の補選など「国政選挙狙い」では本末転倒と言えるでしょう。

 

 来月行われる予定の県民投票をめぐっては、沖縄市、宜野湾市、宮古島市が実施しない意向を示しているほか、うるま市と石垣市では議会で予算案が否決されています。

 (中略)

 玉城知事は県庁で記者団に対し「県や市町村が投票事務を実施しない場合は条例や地方自治法に違反すると考えており、違法な状態を回避するため地方自治法に基づく『是正の要求』も検討していく」と述べ、県民投票を実施しない意向の自治体に対し、より強い姿勢で実施を求めていく考えを示しました。

 玉城知事の姿勢で問題なのは以下の点が抜け落ちていることでしょう。

  • 「辺野古埋め立て拒否」は「普天間飛行場(宜野湾市)の固定化」に直結するが、宜野湾市は『県民投票』に不参加
  • 県の市町村に対する『是正の要求』は正当と考えるなら、国の沖縄県に対する『是正の要求』も正当となる

 いずれも、玉城知事の政治方針に対する批判を招く原因となる可能性があるものです。この点を認識できているとは思えない姿勢は改めるべき点と言えるはずです。

 

“世界一危険な普天間飛行場” というリスクを速やかに除去する気はあるのか

 名護市辺野古に移転するのは宜野湾市にある普天間飛行場です。普天間飛行場は反基地派が「世界一危険な飛行場」とのキャンペーンを展開しており、固定化は論外と言えるでしょう。

 ところが、「辺野古の埋め立て拒否」を選択すると、辺野古への移転が不可能になります。そうなると、普天間飛行場が宜野湾市に固定されたままになっていまうのです。

 宜野湾市が『県民投票』に参加しないのは当然です。なぜなら、何の法的拘束力も持たない上、「辺野古の埋め立て反対」を主張する沖縄県の姿勢は法廷闘争で敗けたからです。

 「普天間飛行場の固定化」の “口実” として使われる可能性が確実な『県民投票』に、普天間飛行場のリスクに日常的にさらされている宜野湾市民が参加するメリットはほとんどないと言えるでしょう。この視点が抜け落ちているのは致命的と言えるでしょう。

 

国からの『是正の要求』は無視する沖縄県が県内の市町村に「県の方針には従え」と矛盾する態度を示す

 次に、沖縄県は『県民投票』に否定的な市町村に対し、『是正の要求』を出すことを視野に入れ、「県の方針に従うこと」を要求しています。これは矛盾する態度である上、墓穴を掘る行為だと言わざるを得ません。

 政府との法廷闘争に敗れた沖縄県は「辺野古移転に協力する」ことを条件に和解をしましたが、「地方自治」を理由に国の方針に対して反発しています。

 沖縄県はこのような対応を「是」としており、『県民投票』では県内の市町村が “沖縄県が「是」とした対応” を採ることで「消極的な姿勢」を採っているだけなのです。そのため、沖縄県に『県民投票』に協力しない市町村を批判する資格はないと言えるでしょう。

 つまり、沖縄県が採るべきは「『県民投票』に消極的な市町村を話し合いで説得する」という選択肢です。しかし、実際には『是正の要求』を背景に県の方針に従わせようとしているのです。

 今後、国が同じ方針を沖縄県に採る可能性は十分にあるため、オウンゴールに近い失策をした状態であることを認識しておく必要があるでしょう。

 

「県民投票 = ポピュリズム」という認識が欠落しているのではないか?

 また、『県民投票』に走っていることに対する警鐘を鳴らす必要もあります。県民投票で県の方針を決定するなら、政治家は不要になります。これはポピュリズムの蔓延を招く原因にもなるため、慎重に扱わなければなりません。

 『県民投票』を実施するなら、タイミングも重要です。

 「名護市辺野古を埋め立てて、普天間飛行場の持つ機能を移転させる」との計画が出た段階での『辺野古埋め立ての是非を問う県民投票』は意味があるでしょう。

 しかし、移設が決定して埋め立て工事が始まった後に『埋め立ての是非を問う県民投票』を実施したところで意味はありません。なぜなら、移設反対派が「県民が投じた反対票の数」を “移設反対のカード” として利用する気が見え見えだからです。

 “茶番” になることは確定しているのですから、無駄な予算拠出に否定的な自治体が現れるのは当然のことです。今年の国政選挙(衆院・沖縄3区補選と参院選)に向けたアピールをするのではなく、市町村レベルでの地元密着が求められていると言えるのではないでしょうか。