民進党・大西健介議員、高須院長から名誉毀損で訴えられる危機に直面
5月17日に行われた衆議院・厚生労働委員会で民進党の大西健介議員(愛知13区選出)が行った質問内容に対し、高須クリニックの高須克弥院長が「根拠のない名誉毀損であり、法的措置に出る」と宣言しています。
大西議員の発言は「高須クリニックは悪徳美容整形外科クリニックの1つ」という印象を与えるものであり、批判を受ける十分な理由と言えるでしょう。
大西健介議員の発言内容
大西健介議員による発言は衆議院インターネット審議中継から確認できます。高須院長が怒りを覚えた発言は 5:16:55 過ぎからの発言内容だと思われます。
広告の話に入っていきたいと思うのですが、今回の医療法ではですね、医療に関する広告規制の見直しが含まれています。
そもそも医療分野は人の身体・生命に関わる分野であり、また専門性が高いとのことで広告が原則禁止のような非常に強い規制がかかっているということであります。
ただしですね、ちょっと美容医療というのは今医生局長の答弁でも少しありましたように普通の医療とはちょっと違う。つまり、何かこうすぐに治さないといけない病気がある訳ではなく、客観的な医療の必要性ではなくて患者の主観的な意向に沿って施術が行われる。また、結果についてもですね、綺麗になったかどうかは患者の主観で決まる。
また、美容医療を受けたことがある人はですね、普通は他人に自分からは言いませんから。「私、美容医療受けたのよ」というのは言わないため、口コミというものが機能しない。それから、自由診療であるので非常に金額が高くなる。
こういう特徴が医療でも少し違うんだろうなと。だから、派手な広告であったりですね、強引な勧誘による集客行為が行われやすい傾向があるんではないかと思います。
一方でですね、医療分野においては原則広告が禁止になってて、非常に限定的な事項しかですね広告することが認められていない。医療機関名であったり、連絡先であったりするんで非常にですね CM も陳腐なものが多いんですね。
皆さんよくご存知のように、例えば『YES 〇〇』とクリニック名を連呼するだけの CM とかですね。若い女性がですね、ゴロゴロゴロゴロ、0120 から始まる電話番号とクリニックの名前を言いながらゴロゴロゴロゴロ転がっている CM というのをですね、皆さん見たことあると思います。
あるいは、テレビでお馴染みのニューハーフタレントがですね、音楽に合わせて踊りながら『〇〇美容外科』というのをですね、ずーっと言い続ける。こういう CM がよく見られるんですね。
で、選挙でもですね、我々名前の連呼というものをやります。確かに知らない人の名前は書きませんから、名前を連呼する訳ですけれども、名前連呼だけだったらその候補者が何を考えているのかも分からない。誰に投票していいのかも分からない。
そういう意味ではですね、こうしたこのクリニックの名前とか、電話番号だけを連呼するこういう広告というのは患者が医療機関や治療方法を選択する上では私は有用なものではないというように思うんですけれども。こういう広告は非常に陳腐なものだと思いますけれども、大臣はどのように思われますか。
「高須クリニックのことではない」との弁解には無理がある
高須氏が「名誉毀損による訴訟を起こす」と宣言したこともあり、大西健介議員は火消しに走っています。
大西議員としては「高須院長の誤解」という形で事態を丸く収めたいのでしょう。しかし、高須クリニックを始めとする美容クリニック業界全体が “悪徳ビジネス” に手を染めていると表現をしたことを撤回・謝罪しなければ、和解すら難しいと思われます。
なぜなら、大西議員は「医療分野で広告は原則禁止であるが、美容医療分野は例外」という点を指摘し、「派手な広告や強引な勧誘が行われやすい傾向がある」と主張しています。その上で、具体的な広告として次の3社を例にあげているのです。
- 誰もが知る美容医療クリニックの CM
- 『YES 〇〇』
→ 高須クリニック - 女性がゴロゴロ転がっている 0120 から始まる CM
→ 城本クリニック - ニューハーフが出演する『〇〇美容外科』
→ 共立美容外科?
- 『YES 〇〇』
美容医療クリニックで「YES 〇〇」の宣伝文句を使う企業と言えば、『高須クリニック』と世間一般には判断されるでしょう。これを「高須院長の誤解」と弁明することは非常に厳しいことは明らかです。
別業種であれば、「YES 〇〇」という宣伝文句を使っている企業が存在しても不思議ではありません。しかし、大西議員が美容医療業界と限定して、衆院の委員会で質問した以上、言い逃れは極めて難しい状況に陥ることになっただけなのです。
マスコミから大西議員への最大のサポートは「この問題を小さく報じること」
野党議員の失言ですから、マスコミは “報道しない自由” を行使することでしょう。しかし、テレビ業界にとっての上顧客である美容医療クリニック業界の大手に対し、“悪徳ビジネス” をしているとのレッテルを貼ったのです。
問題発言を黙認すれば、テレビ局はスポンサーを失うことになります。そのため、「問題を報じたことを理由にスポンサーのメンツを保った上で、大西議員の議員生命も守ろうとする」ことでしょう。
ただ、大西議員が墓穴を掘ったことは否定できません。フットワークが軽い高須院長ですが、むやみやたらに訴訟を起こすような真似はしないと思われます。
おそらく、「和解に応じる要件」などを事前に整理した上で訴訟を起こすはずです。バブル後の逆風が吹き続ける中でも生き残り続ける経営者なのですから、知的な相手との訴訟になることを覚悟する必要があります。
隣の選挙区に医療機関の本部を置く地元の名士を揶揄した大西議員の度胸は評価したい
民進党など野党が謝罪することは想定できないため、結末を迎えるまでに時間を要することが予想されます。
大西健介議員の発言が的を得ているとは言えませんが、無鉄砲で度胸のあることは評価しても良いかもしれません。大西議員は衆院・愛知13区選出ですが、高須院長は愛知12区にある高須病院の理事長を勤めています。
隣接する選挙区で、地元の名士とも言える人物が営んでいるビジネスを「問題ありと思う」と国会で言い切ったのです。知名度がある大手も違法性があるとの認識を示したのですから、大西議員には立証責任があります。下手な弁解は地元支持者からの突き上げを受ける原因となるだけにどのように収束させることができるかが鍵となるでしょう。
マスコミの援護射撃が期待できない中で、大西議員と民進党がどのように振る舞うのかが注目の一件と言えるのではないでしょうか。