イラン大統領選で現職の穏健派ハサン・ロウハニ氏が勝利したことは良いことだ

 現地19日に行われたイランの大統領選挙において、現職のハサン・ロウハニ大統領が勝利し、再選を果たしたと NHK が伝えています。

 イランが抱える課題は “山積み” と表現されていますが、自国だけでは解決できない課題が多数あることは事実です。そのため、協調体制を優先して考える穏健派の現職候補が買ったことはポジティブなことと言えるでしょう。

 

 19日に投票が行われたイランの大統領選挙には4人が立候補しましたが、再選を目指す保守穏健派のロウハニ大統領と、反米の保守強硬派のライシ前検事総長による、事実上2人の争いとなっていました。

 開票作業を進めてきた内務省は、日本時間の午後6時半開票がほぼ終了したとして、その結果を発表しました。それによりますと、ロウハニ大統領が57%の票を獲得したのに対し、ライシ師は38.5%にとどまり、ロウハニ大統領が再選を果たしました。

 

 穏健派のロウハニ大統領が勝利した1番の理由は「核開発疑惑を巡るアメリカからの経済制裁解除を実現させたこと」です。この実績を上回る成果を出す政策を有権者に提示し、支持されない限り、強硬派の意見が採用される見込みはない状況でした。

 ただ、ロウハニ政権が順調に経済発展を続けられるかは少し不透明の状況です。その中で着実に成果を残すことができるかが2期目の課題と言えるでしょう。

 

オバマ政権時とは異なる穏健派のスタンスを示せるか

 ロウハニ政権での最大の業績は「民主党・オバマ政権時代に経済制裁を解除を得たこと」です。

 しかし、現政権は共和党・トランプ政権です。オバマ政権の時と比較すると、“親イスラエル、反イラン” の傾向が色濃くなっており、穏健派としてどのように振る舞うかが鍵となるでしょう。

 相手側が強硬派として振る舞うことは予想できる訳ですから、第三国が「強硬派による一方的な暴走」という印象を抱かせれば、孤立するという最悪の事態は回避できます。

 欧米メディアが「アンチ・トランプ」で一色になっているため、リベラルが喜ぶ『対話』を前面に示しているとコメントするだけでも一定数の味方を得ることになるはずです。

 

「石油」のカードで相手を揺さぶることが鍵

 イランが他の国と大きく異なる点は石油資源を持っていることでしょう。孤立していたため、開発がそれほど進んでおらず、利益を得やすい油田・ガス田が多く残っていると考えられるからです。

 つまり、これをカードをして外交面で活かす時期に来ていると言えます。

 経済制裁が解除されたのであれば、資金を呼び込むことが可能になります。その際、「石油の開発権を(外国企業に)与える見返りとして、イラン国内に〇〇の投資すること」を条件とすれば良いのです。

 〇〇に入るのは自動車でも、家電製品でもかまいません。イラン国内で製造業が根付くために必要な技術やノウハウの移転を求め、産業発展に最も貢献するプランを提示した企業に石油資源の開発権を与えれば良いのです。

 アメリカ、欧州、中国の3グループを中心に競わせ、その中で「イラン経済に寄与する」ことを判断基準にすれば大きな見返りを手にすることができると考えられるからです。

 

「最新鋭の工場を建設する必要はない」と考えれば、イランに投資する意味はある

 「工場への設備投資」というニュースでは “最新ロボットを使った工場” がイメージされるでしょう。しかし、雇用を求める国に進出し、その国の市場をメインターゲットにするのであれば、最新鋭の設備を整える必要はありません。

 自動化が進んでいるほど、労働者は不要となり、雇用に対する貢献度は低くなるからです。むしろ、「減価償却が完了し、グローバルチェーンに適応するために設備を一新したことで古くなった設備をイランに移転させる」という観点で十分すぎる業種も数多くあるでしょう。

 「製造国として実績を残し、自信を付けた時点で最新鋭の設備に切り替えた方がムダが少ない」とイラン側を説得する意味は投資する側にありますし、イラン側にも当面は国内の就業率が高まるという恩恵があるのです。

 

 トランプ政権はアメリカのインフラ設備に対する投資を打ち出していますが、イラン側が「アメリカ側で使わなくなった工場設備で、環境基準を満たしているものを買いたい」との意向を表明すれば、交渉の余地は出てくると思われます。

 見返りに “石油の開発権” が持ちかけられれば、トランプ政権の態度も軟化する可能性は大いにあると言えるのではないでしょうか。