「サウジアラビア等が示した要望書をカタールが受け入れるか」が関係修復のポイントに
サウジアラビアを始めとする中東の4カ国がカタールとの国交を断絶したことに対し、解除の条件として “要望書” が提示されたと NHK などが伝えています。
13項目からなると報じられていますが、カタール側は「受け入れがたいもの」と難色を示しています。サウジアラビアは「交渉の余地はない」と明言しており、どちらが折れるのかの我慢比べとなっている状況です。
中東のサウジアラビアなどがカタールとの国交を断絶する中、中東のメディアはサウジアラビアなどからカタールに対し、断交を解除するための条件が通知されたと伝えました。しかし、カタール側にとって受け入れがたい条件と見られることから、双方の対立解消にはなお時間がかかるとの見方が広がっています。
カタールは湾岸諸国の1つですが、周囲の国とは価値観が少し異なっています。
海底ガス田を共有しているため、シーア派のイランとの関係は経済を介する形で対立することはありません。また、イスラム系のテロ組織と名指しされる過激派組織に資金援助をしていることも異色と言えるでしょう。
このスタンスは「自国が生存する」という点では効果的です。しかし、周辺国は「イランとの緊張関係」や「テロとの戦い」を強いられる立場に置かれることになるため、カタールの自国中心主義が限界に達したことで断交が起きたと言えるのです。
1:テロ組織への資金援助は致命的
サウジアラビアなどの4カ国が突きつけたとされる “要望” の中で影響が大きいと見られるのは以下の3つでしょう。
- テロ組織との関係の断絶
- イランとの外交関係の縮小
- 衛星テレビ局アルジャジーラの閉鎖
「『ムスリム同胞団』(エジプト)、『ハマス』(パレスチナ)、『ヒズボラ』(レバノン)といったテロ組織に資金援助をすることを止めろ」と要求されていることは致命的です。
もし、この要求がサウジアラビアなどの “言いがかり” なら、カタール側は否定するでしょう。しかし、実際には『ムスリム同胞団』のユースフ・カラダーウィ師がアルジャジーラで説法を行う番組が放送されているのです。
国際社会が「テロとの戦い」に取り組む中で、テロ組織に資金提供するなどの協力をしている国は制裁を科されるリスクがあるのです。
2:カタールの肩を持ちたくても、持つ理由がない
カタールにとって厳しいのは肩を持ってくれる国が極めて限定されることでしょう。
“テロ組織の関係の深い国” の姿勢に理解を示す国はごくわずかです。米・英・仏の常任理事国3カ国は否定的でしょうし、トランプ政権の対イラン政策は強硬的です。
中・露がカタールを支援するシナリオは考えられますが、「イスラム系のテロ組織を資金援助するカタールが中国やロシアにいるイスラム過激派を支援する可能性があるのでは?」と指摘されると、中・露の動きは鈍くなると思われます。
つまり、カタール側には自国の立場と歩調を合わせ、共同戦線を張ってくれる第三国はない状況なのです。これまでの “自国中心主義” によるツケを一気に払う時期に追い込まれていると言えるでしょう。
3:「アルジャジーラの閉鎖要求は “表現の自由” を脅かす行為」と主張できるが、テロの煽動放送は欧米では容認されていない
カタール側にとっての唯一の味方は「アルジャジーラの閉鎖要求は表現の自由に反する」というものでしょう。しかし、これも脆弱性が含まれた主張であることに変わりありません。
なぜなら、テロ組織である『ムスリム同胞団』のユースフ・カラダーウィ師が説法をする番組は欧米の放送基準に抵触するからです。
「自分たちの国で放送が禁じられている内容と同じ規制を設け、実施することに反対するのは矛盾しているのではないか」と反論させた時点で “表現の自由派” の主張根拠が崩れてしまうことでしょう。
国交を断絶された側のカタールは第三者を味方に付ける根拠がないと言えるでしょう。話し合いで解決となれば良いのですが、サウジアラビアを始めとする4カ国側には引く理由がありません。そのため、ジリジリとカタールが押し切られることが濃厚になっていると思われます。
“テロ支援国家” と周辺から名指しで批判されている国のために、表に出て活動をすることは民主主義の国にとってマイナスとなります。
第三者の立場にいる日本は「地域間の緊張が続くことは好ましくない」と両サイドにメッセージを送ることに留めておくべきです。深い入りする事案ではないですし、下手に藪をつつけば、蛇が出てくる可能性が極めて高いからです。アメリカなど深く立ち入っている国の出方を見極めた上で対応を正式決定するというスタンスが適切と言えるのではないでしょうか。[]