フィリピン、イスラム系住民による自治政府設立でミンダナオ島の混乱を収める方向へ

 フィリピン・ミンダナオ島でISに共感する武装勢力との戦闘が続いていることに対し、ドゥテルテ大統領がイスラム系住民による自治政府を設立することで事態の収集に動いていると NHK が伝えています。

 “落としどころ” としてはこの手法が最も現実的と言えるでしょう。権限をどこまで移譲し、過激派の活動拠点とならない仕組みを作ることができるかが鍵だと思われます。

 

 フィリピンのドゥテルテ大統領は、国内最大のイスラム武装組織と協力して南部ミンダナオ島にイスラム系住民による自治政府の設立を急ぐ考えを示しました。現地では軍と過激派組織IS=イスラミックステートを支持する武装勢力との間で戦闘が続いていて、イスラム系住民に寄り添う姿勢を強調して政府側につなぎとめることで、ISの影響の拡大を防ぐ狙いもあると見られます。

 

 このニュースでの注目点は “フィリピン最大のイスラム武装組織” である『モロ・イスラム解放戦線』とフィリピン政府が「イスラム系住民による自治政府の設立」で合意しているということです。

 つまり、ミンダナオ島でフィリピン政府と先頭を行っている勢力は武装組織の中でもかなりの強硬派と言えるでしょう。

 

 鍵となるのは「『自治政府』による政権運営を上手く軌道に乗せられるか」ということです。経済政策で結果を残し、良好な生活水準を提供することができれば、地域情勢は安定します。

 ただ、すぐに結果を出すことが難しい分野でもあり、自治政府による統治体系の構築から始める必要があるため、課題は山積みと言えるでしょう。

 『自治政府』に与えられる裁量度ですが、これはフィリピン政府からの支援度に反比例する形にすべきです。外交・防衛は中央政府が持つ “道州制” を目標にまずは地域政府という立ち位置で自ら採算が取れる状態にまで地域経済を発展させなければなりません。

 イスラム系住民の価値観による政権運営を『自治政府』が行い、フィリピン屈指の好調な経済圏となれば、独立が視野に入ることになるでしょう。そのためには地域経済が機能していることが絶対条件なのです。

 

 フィリピン政府と “フィリピン最大のイスラム武装組織” が歩調を合わせたことは意外でしたが、武力行為は周囲から支持を得られないと現時的な視点を持っていた武装組織がいたことは幸いだったかもしれません。

 戦闘行為を躊躇なく行う好戦的な強硬派を速やかに排除し、穏健派と『自治政府』の枠組みをフィリピン政府が作ることができるのかに注目です。