シリア問題を報じるメディアはそれと同等以上の熱意を「フィリピンのIS問題」にかけるべきだ
フィリピン・ミンダナオ島でイスラム過激派組織『IS』とフィリピン軍との戦闘行為が続いていますが、IS側が支配下においた街では “人間の盾” を始めとする残虐行為が起きていると AFP 通信が伝えています。
このニュースに対するマスコミの関心度が極めて低いことは問題です。フィリピンだけの問題ではなく、イスラム教徒が多数派であるマレーシアやインドネシアといった隣国に影響が波及する恐れがあるため、無視できる状況ではないと言えるはずです。
イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」系武装勢力と国軍との間で戦闘が続くフィリピン南部ミンダナオ(Mindanao)島のマラウィ(Marawi)で、武装勢力の戦闘員らが市民を奴隷として動員し、逃げようとした人たちを殺害していることが分かった。当局が13日明らかにした。
国軍と武装勢力の戦闘は3週間に及んでいるが、フィリピン政府によると、武装勢力の支配下にあるマラウィの一部地域には、いまだに最大1000人の市民が取り残されている。
戦闘が行われているのはミンダナオ島のマラウィという街です。マラウィはイスラム教徒ミンダナオ自治地域にあり、イスラム教徒の数が多いエリアと言うことができます。
フィリピン南部で起きていることはシリアやイラクで起きていることと同じです。イスラム過激派の思想に感化された勢力が武装革命に踏み切っているのであり、状況を報じ続けなければなりません。
ミンダナオ島はセレベス海を経て、南にはインドネシア、西にはマレーシアが位置しています。どちらもイスラム教徒が多い国として知られており、過激思想が蔓延するリスクを両国ともに懸念しています。
また、これら両国は日系企業の進出先としても知られています。
アジアで成長が見込まれる国が抱える “リスク” を正確に伝えることが『報道の価値』になるはずです。しかし、日本のマスコミはほとんど報じていないことが実状です。
海外メディアが報じた日本語訳記事が存在するだけである状況は伝えるべき情報の優先順位付けが間違っているのではないかと思われます。
フィリピンの件は『イスラム教至上主義』が根幹に横たわっていますが、“至上主義” で問題となるのはイスラム教だけではありません。どの宗教でも至上主義に傾倒すれば、過激派の温床になります。
宗教だけの問題ではなく、共産主義など政治的思想でも同じ結果を招くことになるでしょう。
「どの主張内容が素晴らしいか」を意見することは思想であり、これ自体が問題となるケースはごく稀な場合です。しかし、「特定の思想に基づく理想的な社会を実現するためには手段を問わない」と考える急進的な人物・団体が出てきた場合は取り締まらなければなりません。
「武力や暴力を背景に特定の価値観を押し付けようとする勢力」を排除することができなければ民主主義はいとも簡単に崩れることでしょう。
それが日本に近いフィリピンで起きているのです。イスラム教徒が多いマレーシアやインドネシアにも影響が出るリスクもありますし、新疆ウイグル自治区を抱える中国も同じリスクを抱えているのです。
そのことを念頭に置くと、扱わなくて良い内容とは言えないでしょう。1週間に1度は状況をまとめてアップデートする程度の継続的な報道が必要になると言えるのではないでしょうか。